計画の「白紙撤回」要望 吉浜の住民有志が市へ 民間の太陽光発電所建設

▲ 大窪山で計画される太陽光発電所の建設に対し、吉浜地区の住民有志が市へ反対要望書を提出

 大船渡市三陸町吉浜の大窪山に民間事業所が太陽光発電所を建設する計画に対し、地元・吉浜の住民有志からなる「大窪山太陽光発電所建設に反対する会」(小松錦司代表、21人)は25日、建設予定地の一部を所有する市へ計画の中止を求める要望書を提出した。同会は景観保全、地域の水源確保などの観点から「大窪山への建設は認められない」として、市に改めて計画の白紙撤回を強く求めた。
 吉浜地区で太陽光発電事業を計画しているのは、福岡県福岡市に本社がある自然電力㈱(代表取締役・磯野謙、川戸健司、長谷川雅也各氏)。当初は吉浜地区の荒金山と大窪山(一部市有地を含む)に太陽光発電所2カ所を整備するとしていた。
 しかし、地域住民からは自然環境や水源への影響、土木造成工事による土砂流出、大雨時の災害リスクなどを懸念した反対の声が続出。こうした声を受け、同社は事業内容を見直し、3月下旬に市が主催して同地区で開いた住民代表らに対する説明会で、変更後の事業内容を示した。
 変更後の計画では、荒金山での造成工事をとりやめ、連携変電所のみを整備。太陽光パネルは大窪山のみに設置し、出力14・7メガワットの発電所2カ所を計画する。発電電力は約37メガワットと当初計画を縮小し、年間発電量は3万2000メガワットアワーを見込む。
 同山は国立公園法の規定により、土地の造成工事ができないため、パネルはくい打ち工法で湿地帯を避けて設置。低木などの伐採は最小限にとどめるとしている。
 反対する会は、こうした見直し後の計画に対し、改めて事業中止を求めようと要望書を取りまとめた。市への提出は市役所で開かれ、同会からは小松代表(78)ら役員、世話人の5人が訪問。市側からは戸田公明市長、志田努副市長、担当職員らが対応し、地元の東堅市議員が同席した。
 小松代表は要望書に加え、本年度総会で計画への反対を決議したという吉浜本郷集落(稲作)と、大野、中通、下通、上通、後山、根白6部落会の各代表者らが署名し、市と事業者が土地賃貸借契約を締結しないよう求める反対決議書を戸田市長に提出した。
 要望書には、▽建設計画地は五葉山県立自然公園内の大窪山森林公園内にあり、景観を壊す▽計画地は吉浜川の水源地でもあり、9万枚以上の太陽光パネルを設置する工事計画は、地下浸透水、湧水の水量低下を招くだけでなく、野生生物のえさ場を奪い、里山への出没を助長する▽吉浜川の水量が減少すれば、吉浜湾で行われているワカメやホタテの養殖、アワビ、海藻の生育に必要なミネラルの低下を招く──などの理由から、事業の白紙撤回を求めている。
 市側は、3月下旬に開いた説明会の概要と変更後の計画を示し、「市としては、事業の意義や工事計画を地域住民に説明して理解を得るよう努め、事業実施につなげたいと考えている」とする基本姿勢などを説明。「地区の皆さんから十分な理解が得られてはいないため、現時点で土地は貸していない」とした。
 小松代表は、「大窪山のみでの事業は、かえって反対が出る。大窪山で行うのはやめてほしい」と要請。別のメンバーらも「一番悪いのは条件が整っていないこと。ほかの場所を探す努力を」などと求めた。
 戸田市長は「一番必要なのは、吉浜の多くの皆さまに市の考え方、事業者がやろうとしている正しい姿を示し、理解をしてもらうこと。地域の皆さまの気持ちを理解しながら、総合的に判断していく」との考えを示した。市は今後、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ、事業計画の変更に関する住民説明会を開くとしている。