手指消毒用の代替品に 高濃度エタノール製品『酔仙77』の出荷開始 酔仙酒造(別写真あり)
令和2年5月29日付 7面
陸前高田市の酔仙酒造㈱(金野連社長)は28日、手指消毒用エタノールの代替品となる高濃度エタノール製品『酔仙77』の出荷を開始した。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、手指消毒用エタノールの需要が切迫している中、「感染防止の役に立てれば」と製造・販売の準備を進めてきた。製造量に限りがあるため、気仙地区の医療機関を中心に看護・介護福祉施設、学校、行政機関への販売を優先する。
医療機関などに優先販売
『酔仙77』は、2月下旬から開発の検討を始め、大型連休明けの5月上旬に製造を開始した。医薬品または医薬部外品ではないが、消毒用エタノールの代替品として手指消毒に使用することができる。
原料用アルコールを使用し、加水から瓶詰めまで既存の製造ラインを活用。瓶は清酒用(300㍉)のものを流用したが、キャップは高濃度エタノール製品用のものを新たに調達した。
アルコール度数は、もっとも消毒効果が期待できるといわれている77%。殺菌に適したアルコール度数は60%台から70%後半とされ、それ以上高くなると十分な殺菌効果が出る前に揮発してしまうという。
出荷初日は、社員らが慎重に積み込み作業を行い、大船渡市猪川町にある大船渡蔵から気仙3市町の行政機関や消防署、市社協、介護老人福祉施設など5カ所に製品を届けた。
今回は約800本を準備し、このうち1箱12本入りのものを31箱(372本)出荷。消防法上、社内に置いておける数量は限られてしまうが、同社では「需要があれば製造ラインの回転数でカバーする」としている。
同製品は医療機関や福祉施設などを優先して販売するが、一般向けにアルコール度数が66%の製品の開発も検討中。杜氏(とうじ)でもある同社醸造課の金野泰明課長(44)は、「先行きが見えない状況で、第2波が来るかもという話も出ており、冬を迎えたときどうなるか分からない」と警戒しつつ、「ある程度の需要には社内で柔軟に対応できる。できる範囲で製品作りに取り組みたい」と意気込む。
『酔仙77』は飲用不可。危険物第4類(引火性液体)、アルコール類(エタノール)危険等級Ⅱ(水溶性)に分類されることから、輸送や保管、容器の移し替えの際には十分な注意が必要となる。火気厳禁で、冷暗所で保管すること。転売は固く禁じられている。
販売先が限定的なため、価格は非公開。東日本大震災の際に気仙を支援してくれた自治体にも声を掛けており、金野課長は「酒造メーカーとしてできることをやるだけ。幸い岩手県では感染者が確認されていないので、引き続き県内の感染者がゼロのまま、全国でも感染が広がらないよう力になれれば」と話していた。
問い合わせは同社(℡47・4130)へ。