販売所をリニューアル 地域の魅力発信に向け 神田葡萄園(別写真あり)
令和2年6月10日付 7面

陸前高田市米崎町の㈲神田葡萄園(熊谷晃弘代表取締役)はこのほど、リニューアルオープンした。販売所の内装・外観を刷新し、農業体験や観光などのニーズにこれまで以上に広く対応。今月1日からはマスカットサイダーの定期便サービスも開始し、地域の魅力発信に向けて新たな一歩を踏み出した。
定期便サービスも開始
同社は明治38年創業の老舗。当時は東北でもいち早くぶどう酒造りを手がけ、「恵比寿葡萄酒」という名前で酒造りを始めた。
ぶどう酒の製造を中止した昭和28年以降は、ぶどう液製造へシフト。「マスカットサイダー」をはじめとする地場産品を開発し、東日本大震災後の平成25年には果実酒の免許を取得し、「リアスワイン」の銘柄で再びワイン造りを行っている。
東日本大震災では、高田町の旧道の駅高田松原内にあった販売拠点が津波で流失。その後、米崎町の事務所を改装し、販売所を兼ねて営業を再開した。
販売所のリニューアルについて、熊谷代表取締役は「震災後から構想していた」と語る。ワイン製造や気仙内外から訪れる多くの団体客らに対応できるよう、新しい販売拠点の必要性を感じていたという。
販売所の改装にあたっては、クラウドファンディングを利用し資金を集めた。地元内外の200人余りから寄せられた多くの善意により目標金額を達成し、改装工事は4月までに完了した。
リニューアルした販売所は、出入り口が国道側に変更され、白を基調にした外壁や、周囲の芝生に設置されたおしゃれなテラス席や看板が目を引く。外壁には、創業当時と同じ字体で社名を配した。
屋内も、木のぬくもりが感じられる落ち着いた雰囲気に。自家製ワインや雑貨、セレクト品の販売ブースのほか、自由に座れるテイスティングスペースも確保し、多数の来店があっても対応できるよう間取りを工夫した。
当初は、クラウドファンディングの協力者を招き、リニューアルオープンのお披露目行事を開催する予定だった。新型コロナウイルスの影響により行事は秋に延期となり、大々的な広報も控えざるをえなかった。
また、3~5月の期間の売り上げも前年に比べ4割ほど落ち込み、主力商品のマスカットサイダーの製造が4月から約1カ月間休止になるという影響も出た。
苦境を強いられながらも、同社では「ワイン文化を三陸に根付かせ、果樹を次世代に継承するために」と先人の意志を引き継ぎ、丹精を込めてぶどう園の整備にあたっている。
今月1日からは、新サービス「マスカットサイダー定期便」を開始。マスカットサイダー12本(6500円)または24本(1万2000円)のセットを月に1度発送するもので、送料込みで通常よりお得に商品を購入できる。
サービスは7、8、9月の3カ月間が対象。暑中見舞いや盆休み関係の消費を見込み、まとまった収入の確保と、地産商品の継続的な魅力発信につなげる。
熊谷代表取締役は「まだ声を大にして来店を呼びかけられないが、私たちも感染予防策を確保しながら営業を行う。ぶどう園の見学なども従来通り受け付けている。今後も地域に根ざした会社として運営を続けていきたい」と意気込んでいる。
問い合わせは同社(℡55・2222)へ。