新型コロナウイルス──広がる影響と課題──⑧/小中学校の感染予防策

▲ 児童会や委員会活動の中で新型ウイルス対策に取り組む日頃市小の児童ら

児童・生徒の安全を守るために


 子どもたちを新型コロナウイルスの脅威から守るため、気仙の小中学校や高校、放課後学童クラブなどでは、日々感染予防策が講じられている。感染症の特効薬がいまだない状況下で、教員や保護者、児童・生徒らは、「感染症にかからないように、広めないように」とそれぞれにできることを模索し続ける。
 新型ウイルスの感染経路は、主に咳やくしゃみなどの飛沫(ひまつ)感染や、手、ドアノブ、手すりなどの物を介する接触感染が挙げられる。ワクチンがない現状では、自分の体や身の回りの物のこまめな消毒・殺菌のほか、人との接触を減らすなど、ウイルスを「持ち込まない、持ち出さない、広げない」ことが感染予防につながる。
 気仙の各学校では、文科省が提示した「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル~学校の新しい生活様式~」に基づき、教職員らが集団感染のリスクを減らすための対策を練っている。
 具体的には、密集、密閉、密接の「三つの密」を避けることを基本に、生徒や教員、来校者のマスク着用、手洗いうがいの徹底、昇降口への手指消毒用アルコールの設置、教室や集会の場で児童生徒が互いに距離を取り合うこと、屋内でのこまめな換気などが行われている。
 大船渡市の第一中学校(千葉浩之校長、生徒424人)は本年度、閉校した同市内の3中学校が編入統合し、生徒、教職員ともに人数が昨年より増えた。全校生徒が集まる際にはマスクを必ず着用させ、声を発する場面を少なくするなど対策を実施している。
 教職員らは、さまざまな制限がある中で学校生活を送る生徒たちの心のケアにも気を配る。生徒たちがストレスをためないよう、声がけやヒアリングなどを通して積極的にコミュニケーションを図っている。
 千葉校長(56)は「生徒たちに普段通りの学校生活を送らせ、個々の力を発揮することができる場を提供したい。しかし、新型ウイルスの感染が収束しない以上その見通しが立たず、ジレンマを抱えている先生もいる」と、ウイルス対策と学校生活両立の難しさを語る。手探りの状態が続き、非常に難しい問題ではあるが、「今後も保護者の協力も得ながら、ウイルスとの付き合い方を考えていく」という。
 一方、児童が新型ウイルスの予防、感染拡大に向けて、独自の取り組みを展開している小学校もある。
 大船渡市の日頃市小学校(菊池ゆかり校長、児童71人)の児童会執行部は、疫病退散の御利益があるとされる妖怪「アマビエ」の絵を募り、校内に飾る「アマビエイラストコンクール」を企画した。
 作品は今月15日(月)から1週間募集する予定。鈴木咲虹児童会長(6年)は「アマビエの作品を飾ることで、新型コロナウイルスが日頃市小に寄ってこなくなるようにと企画しました。みんなが安全に学校生活を送れるように取り組みたい」と願う。
 同校の保健委員会も、▽手洗い用石けんの点検・補充▽保健集会で新型ウイルスについて発表▽昼の放送で感染予防策を発信──などに取り組む。
 このうち、16日(火)に予定する保健集会は、通常は体育館に全校児童を集めて行うが、密集空間を避けるため今回は校内放送に変更。保健集会では、新型ウイルスが広がる原因や感染予防策についての発表が行われる予定で、佐藤美月委員長(6年)は「石けんの点検や感染予防の呼びかけも続けていく」と主体的に動く。
 同校の来客用玄関には、長野陸人君(4年)と佐藤輝君(5年)が作った紙粘土のアマビエが鎮座している。「早く新型コロナウイルスが収束してほしい」という願いが表れている。
 放課後や休校中の児童の居場所となる各地の学童クラブでも、ウイルス対策に取り組んでいるが、対応は施設や地域の環境によってそれぞれ異なる。
 各クラブでは利用前の検温や随時の手洗いといった感染防止対策に意を注ぐ。この中で、施設の広さと利用児童数によっては、社会的距離が十分とりきれないなど、対応に苦慮する運営組織もみられる。個々の事情に応じたサポートのあり方は、新型ウイルス感染症が生んだ課題の一つだ。