広田湾の状況などつぶさに 昨年度の調査報告書まとめる 陸前高田出身の小松氏ら

▲ 昨年度の調査内容をまとめた報告書

小松 正之氏

 陸前高田市広田町出身で、水産庁OBの小松正之氏が代表理事を務める一般社団法人・生態系総合研究所は、平成31(令和元)年度の広田湾・気仙川総合基本調査事業報告書をまとめた。同年度中に連続自動水温測定器を広田湾のカキ養殖いかだなどに設置し、カキの成長と比較検討しつつ測定したことについて小松氏は「日本初の試み。養殖業にも有用なデータが得られることが期待される」としている。

 

日本初の試みにも言及

 

 捕鯨などの交渉に活躍し、「タフ・ネゴシエーター」(手ごわい交渉者)として名をはせた小松氏は、水産庁を経て政策研究大学院大学教授、アジア成長研究所客員主席研究員、東京財団上席研究員などを歴任。
 平成27年に「気仙川・広田湾プロジェクト(森川海と人プロジェクト)」を立ち上げ、陸と海との密接な関わりについて科学的な見地から明らかにしようと、気仙川や広田湾、五葉山などの環境調査を毎年実施。復興関連事業などの影響も注視し、自治体への提言活動も行っている。
 広田湾・気仙川総合基本調査は、陸前高田市の委託事業として30年度から実施。3カ年にわたり、広田湾と、同湾と河川でつながる陸域の概要を調査しながら、風向・風力、気仙川からの流入水、導流堤、コンクリート建設物などが水産業にどのような影響をおよぼすのかをはじめ、高田松原と古川沼の底質、生物相などについて評価するもの。
 2年度目の報告書は調査の目的と概要の紹介に始まり、海外の取り組みと事情、国内他地域の現状と課題、国内(現地)調査活動、広田湾の水温・流向流速等の調査報告などで構成。
 沿岸地域の生態系研究を専門とする米国スミソニアン環境研究所のデニス・ウィッグハム博士来日国際シンポジウム(昨年9月)の開催記録、今年2月に同環境研究所と設計・建設会社のアンダーウッド社が行った古川沼の視察や漁業者らとの意見交換による提案と考察なども盛り込んだ。
 あとがきで小松氏は、年度中に連続自動水温測定器を広田湾のカキ養殖いかだとはえ縄に設置し、カキの成長と比較検討しつつ測定したことについて、「日本初の試みであり、場所によって水温の変動特徴が異なり、カキの育成も異なることから、これらの情報が蓄積されれば、養殖業にも有用なデータが得られることが期待される」と言及。
 これら計測を継続・充実させて科学的データの蓄積を図り、市民へ還元させながら、好ましい環境・自然と生活圏を次世代に創造し残すという調査の意義を改めて示している。

 同報告書を本紙の読者3人にプレゼントします。応募は、はがきに住所、氏名、電話番号を明記したうえ、「報告書」プレゼント係(〒022・0002大船渡町字鷹頭9の1)へ。締め切りは19日(金、当日消印有効)。応募者が複数の場合は抽せんのうえ決定し、当せん者に送付します。