まちの〝顔〟に栄誉 建築学会作品選奨に選出 大船渡消防署住田分署

▲ 建築学会作品選奨に選出された住田分署

 住田町が整備し、平成30年に完成した大船渡地区消防組合大船渡消防署住田分署が「2020年日本建築学会作品選奨」に選出された。一般社団法人・日本建築学会が発行する作品選集の掲載作品のうち、学術・技術・芸術の総合的観点から特に優れた作品が選出されるもので、特殊な木質構造を採用するに当たっての技術的な工夫や造形と機能の融合などが評価された。森林・林業日本一の町づくりを目指す同町の〝顔〟ともいえる施設の選出に、関係者から喜びの声が上がっている。

 

技術的工夫など評価され

 

 日本建築学会作品選奨は平成7年に創設。気仙では昨年、陸前高田市の高田東中学校も選出されている。
 今年の作品選奨は、昨年9月に選考委員会が開催され、同学会の作品選集2020に掲載された96作品の中から19作品が現地調査の対象となった。その調査結果を踏まえ、今年1月の委員会での投票により住田分署を含む12作品が選ばれた。
 住田分署の選出理由としては、特殊な木質構造の採用に当たって技術的な工夫や検証、維持管理への配慮が十分に行われていることや、造形と機能の融合などが高く評価された。
 総面積の9割が森林の住田町では、林業や木材加工業の振興を目的としてさまざまな試みが展開されており、その一環として平成24年に木造の役場庁舎が完成した。
 町運動公園野球場に隣接する住田分署は平成29年5月に着工し、30年3月末に完成。敷地面積は約5000平方㍍、総工費は4億8656万円。
 町は新分署を、中心市街地における中核施設の一翼と位置付け。公募型プロポーザル方式で40業者の提案から選ばれた㈱SALHAUS(東京都)が設計を担った。
 町役場がシンボル性のある木造建築となっていることから、住田分署も同様にシンボル性が求められた。工法には木材の特性を生かした「貫式木材ラーメン構造」を採用し、高い耐震性と間取りの自由度を確保した。
 また、柱梁の貫の接合部には、木製の込み栓と楔(くさび)を利用。極力金物を用いずに、木造伝統の技術を踏襲した。柱や梁は、町産のスギ、カラマツの集成材を中心に調達した。
 屋根や床、階段の構造部材には、林業資源を生かす新たな産業化の観点から注目されるスギ材の木材パネル・CLT(直交集成板)を利用。木材という地域資源を活用した住田分署が完成したことにより、町役場と合わせてまちの中心部に一体感のある新たな風景が誕生した。
 町総務課の山田研課長は「町で進めている『森林・林業日本一の町づくり』も含めて、大規模建築として評価を受けて光栄。町の顔にもなっている施設なので、いっそうのPRになれば」と話していた。
 選出を記念して、町には同学会から銘板が贈られており、役場内に展示後、住田分署へと移す。