新型コロナウイルス──広がる影響と課題──⑪/ 公共施設利用の段階的緩和

▲ 19日から利用が再開された夢アリーナトレーニングルーム

「通常通り」の再開へ手探り

 

 政府は19日から、新型コロナウイルス感染症の影響で自粛を要請していた県をまたぐ移動を全面解除し、イベントなどの規模の制限も緩和した。気仙でも国や県の対処方針に基づき、スポーツ施設をはじめ各施設の利用制限を緩和する動きが見られる。ただ、入館時の手指消毒や検温など感染予防策は緩めず、「ウィズ・コロナ」を前提にした対策がとられている。
 感染予防のためこれまで利用を休止していた陸前高田市高田町の市総合交流センター(夢アリーナたかた)内のトレーニングルームは19日、約3カ月半ぶりに利用が再開された。
 同日、早速トレーニングルームで汗を流した住田町世田米の大和田陽介さん(25)は「待ちに待った再開。多少不安もあるが、マシンの消毒なども徹底されている。あとは自分自身が感染予防をしっかり行えば安全に利用できると思う」と喜んでいた。
 夢アリーナは、東日本大震災で被災した旧市民体育館と旧B&G海洋センター屋内プールの機能を有する施設として、平成30年4月に開所。各種スポーツ大会の会場としても頻繁に利用され、来館者数は多い日で1000人を超える。
 感染拡大による休館を経て、5月19日にトレーニングルームを除く施設の利用を再開。バレーボールコート3面分の広さの多目的ホールは50人までの利用制限が設けられた。
 19日からは利用人数の上限を、多目的ホール200人、アリーナ100人、フィットネスルーム10人、屋内プール30人、柔剣道場各30人、トレーニングルーム10人に緩和。トレーニングルームは器具の消毒のため、午後1時からの開設で、利用時間は1人2時間までを目安としている。
 陸前高田市は5月まで、市主催のイベントや会議などについて原則中止・延期し、市民らにも同様の対応を求めた。
 今月からは少人数のものから規模の拡大を図ることとし、19日からは屋内・屋外問わず上限を1000人までに緩和。屋内は収容率の50%以内、屋外は人との距離(できれば2㍍)を確保することを条件としている。
 ただし、可能な限り参加人数を減らすよう努め、クラスター(感染者集団)発生のおそれがある密な集まりは中止、延期するなど引き続き慎重な対応をするよう市民らに協力を求めている。夢アリーナでは引き続き、入館時の検温、氏名や住所、連絡先の記入、アルコール消毒液の常設、小まめな換気も行う。
 市スポーツ交流推進室の小泉剛志補佐は「市民らの感染防止意識が高く、制限にのっとって利用してもらっている。今後は大会などでの利用も増えることが考えられるが、まずは安全が第一。感染防止徹底へ引き続きご理解とご協力を」と呼びかける。
 大船渡市も、政府が先月25日の緊急事態宣言解除後に示した「外出自粛の段階的目安」に合わせ、公共施設やイベント開催に向けた対応指針を策定。屋内、屋外施設とも、利用人数は国よりも厳しい制限を設けている。
 19日から「第2段階」に入り、施設利用の制限をさらに緩和した。これを受け、大船渡町の市防災観光交流センター(おおふなぽーと)では、1団体の利用を2時間から3時間に拡大。18日以前は「過去2週間以内に北海道、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県を訪問しないこと」が条件にあったが、19日に撤廃した。
 盛町のカメリアホールは、「第1段階」中の利用は1階の多目的ホール半分のスペースに限られていたが、19日以降は2階の調理室を除く各室が利用可能に。午後4時までとしていた利用時間も、同9時30分までと平常通りに戻した。
 公共施設の緩和方針を説明する際に、市は「スモールスタート」という表現を添える。まずは限定的に展開し、様子を見ながら順次規模を拡大させていく狙いがある。
 これまで通り、市内で感染の流行がなく、県や政府などから移動自粛の要請がなければ、7月10日(金)から「第3段階」に入る。人数上限は屋内、屋外施設とも1000人に拡大し、屋内施設では利用時間上限を撤廃。8月1日(土)の第4段階では、人数上限もなくなり「できるだけ通常通り」となる。
 段階的緩和を進める中で、市内では、3月から5月にかけてほとんど行われていなかった公共施設での会議が増えてきた。ただ、催事開催に関しては、まだ慎重な動きが目立つ。
 今月6日に行われた、盛町青年商工会(門田晃明会長)主催のワークショップ。新型ウイルス対応を巡って情報共有や意見交換を行う中で話題となった一つが、「第4段階」以降でも屋内施設の収容人数を「50%以下」としている点だった。
 屋外施設での人数も「十分な間隔(できれば2㍍)」という目安は残る。参加者からは「イベントを企画する際に、この部分をよく考えなければ」との声が出た。
 「スモールスタート」の先にあるゴールは、昨年以前のような光景か。それとも、新たな形が求められるのか。自粛から活動再開へと少しずつ移行しつつある中で、手探りの日々が続く。