地元から事業推進の声も 反対論も根強く 吉浜の太陽光発電事業説明会

▲ 市民ら90人余りが参加したリアスホールでの説明会

 大船渡市による「吉浜地区太陽光発電事業に関する説明会」は、20日夜に三陸町吉浜の旧吉浜中体育館で、21日は盛町のリアスホールでそれぞれ開かれた。同地区の大窪山で自然電力㈱(磯野謙、川戸健司、長谷川雅也各代表取締役、本社・福岡県福岡市)が計画する太陽光発電事業を巡り、根強い反対論があった一方、地元の吉浜でも事業推進を求める声が挙がり、賛否が分かれた。
 説明会は19日に始まり、同社は地元住民が懸念する土木造成工事による土砂流出などの危険性を削減するため、吉浜地区の荒金山に連携変電所のみを設置し、市が所有する大窪山の牧場跡地(事業用地約98㌶)に太陽光発電所を設ける事業計画を提案。
 太陽光パネルは希少植物の生息が指摘される湿地帯などを避け、用地内の約36㌶にくい打ち工法で配置。工事は支障木の除去や道路整備に限定し、濁水対策も図る。
 発電所の発電容量は37メガワットで、年間総発電量は約3万5000メガワットアワーと、一般家庭約1万世帯の年間使用電力量に相当。年間の二酸化炭素削減効果は、森林約3100㌶分という。
 事業者は、同社と東京ガス㈱が資本業務提携契約を締結して設立した会社・プロミネットパワー㈱を業務執行者とする岩手三陸太陽光発電合同会社。開発、運営、建設、保守管理などは自然電力と同社グループが担う。事業期間20年間の地域経済への効果は約40億円を見込み、同市のまちづくりにも寄与する考え。
 用地を所有する市は▽地球温暖化抑止への貢献▽未利用市有地の有効活用▽市税収入、市有地賃貸料で自主財源の確保▽建設工事、施設の維持管理に地元企業の活用▽事業者による地域づくりへの参画──などを理由に、事業実施の必要性を示している。
 説明会2日目の旧吉浜中には地域住民30人、3日目のリアスホールには市民93人が出席。市からは戸田公明市長、志田努副市長、関係部局の職員らが、自然電力からは長谷川代表取締役、事業担当者らが臨んだ。
 2日目の会場では、「住民の7割が反対している」「山々、川、谷に手を付けないでほしいと住民の多くが思っている」などの反対の声があった一方、初日には出されなかった賛成意見も複数挙がった。
 住民の一人は「漁業が盛んな地域だが、ホタテやサケなどに地球温暖化の影響を受けている。温暖化防止に貢献するためにも事業を進めるべきであり、その経済効果を活用して若者が地元に定着する行政サービスをしてほしい」と、事業推進への思いを述べた。
 ほかにも「去年の台風被害もあって一刻も早い地域への防災対策などが必要な中で、より安定した収入の確保が必要」「地球温暖化抑止のためにできることをやろう」などと賛成する意見があり、発言はしないものの拍手で賛同する住民の姿もあった。
 3日目のリアスホールでは、複数の発言者が大窪山の自然環境や希少植物などの保全、地すべり地形による災害の危険性などを理由に反対の意向を示した。「今まで大窪山に何もしなくても、大雨などの被害を受けている。リスクを避けるのではあれば、何も造らない方がいい。大窪山を森に戻してほしい。計画の白紙撤回を」などと求めた。ほかに、「予定地はシバ型草地になっているが、その下は真砂土で、非常に不安定な土壌。専門家に調査をしてもらって問題がなければいいが、このまま実施するのは不安」との指摘も寄せた。
 一方、賛成者からは「地球温暖化を防ぐためにも再生可能エネルギーに取り組むべきであり、市の財政も健全化させなければならない。地域経済への効果もあり、事業者側では地域貢献も考えている」「自然は大事だが、市は人口減少、財源不足で悩んでいる。事業は大船渡の切り札だと思う」などと意見。「計画には賛成だが、反対者は大窪山の地形や地質を心配していると感じた。事業者、市がそれぞれ専門家に調査をしてもらい、結果を市民に示すことも必要では」との提言もあった。
 説明会は最終日の22日夜、旧吉浜中で開かれた。