最終日も賛否分かれる 市は推進に理解求める 吉浜の太陽光発電事業説明会

 大船渡市による「吉浜地区太陽光発電事業に関する説明会」は22日夜、三陸町吉浜の旧吉浜中体育館で開かれた。同地区の大窪山で自然電力㈱(磯野謙、川戸健司、長谷川雅也各代表取締役、本社・福岡県福岡市)が計画する太陽光発電事業に対し、出席した地元住民からは事業推進、反対それぞれを求める意見が出され、賛否が分かれた。市は事業推進への理解を求めており、今後の事業の行方が注目される。
 説明会は19日に始まり、最終日は地域住民ら20人が参加。市からは戸田公明市長、志田努副市長、関係部局の職員らが、自然電力からは長谷川代表取締役、事業担当者らが臨んだ。
 計画では、吉浜地区の荒金山に連携変電所を設置し、市が所有する大窪山の牧場跡地(事業用地約98㌶)に太陽光発電所を設置。太陽光パネルの設置面積は約36㌶で、吉浜川の流域面積2480㌶の1・5%に当たる。
 発電所の発電容量は37メガワットで、年間総発電量は約3万5000メガワットアワーと、一般家庭約1万世帯の年間使用電力量に相当。年間の二酸化炭素削減効果は、森林約3100㌶分としている。
 事業者は、東京ガス㈱の孫会社となる岩手三陸太陽光発電合同会社。開発、運営、建設、保守管理などは自然電力と同社グループが担う。事業期間20年間の地域経済への効果は約40億円を見込み、同市の持続可能なまちづくりにも寄与する考え。
 用地を所有する市は▽地球温暖化抑止への貢献▽未利用市有地の有効活用▽市税収入、市有地賃貸料で自主財源の確保▽建設工事、施設の維持管理に地元企業の活用▽事業者による地域づくりへの参画──などの観点から、事業実施の必要性を示した。
 意見交換ではまず、事業に賛成する住民が発言。計画を巡る問題の一つである吉浜川に関し、「水量が減ったのは、大窪山を放牧地にするために大量の木を伐採したのが一因。今回も自然にいくらか影響を及ぼすということでは同じ部類に入るが、そうであれば、当時やったことは住民にとって利益があるから良いことだ、今回は住民にとって利益がないから非だ、ということにはならないと考える」と述べた。
 別の住民からは地球温暖化による海の変化を踏まえ、「地球規模で考えなくてはならない問題」「若い漁業者の考えを大事にしてよく市と相談し、市も本腰を入れてからやるべき」との声もあった。
 一方、反対する住民らは「発電所ができたらどうなるのか不安。絶対に許せない」「木々を伐採して放牧地を造ったのであれば、昔の山に戻すべき」などと意見。
 漁業に従事する住民は、「素晴らしい事業とは思うが、どうしても『何かがあったら』と地元に住んでいる人は考えてしまう。ネックは山の頂上で事業を行うことと、そこで万が一何かがあったら。そうした不安がぬぐいきれない」と切実な思いを訴えた。
 長谷川代表取締役は「100%災害が発生しないとは言い切れないが、100件手がけてきて、似たような環境も経験してきて、ちゃんと(事業が)できると思っている。ぜひとも信用していただきたい」と答えた。
 最後に、戸田市長は「賛成の意見、懸念点があってどうしても賛成できないという意見があった。市としては、反対される方々からの貴重な意見を事業の中に反映してもらい、何とかこの事業を進めたいと考えている」と、改めて理解を求めた。
 説明会を終え、長谷川代表取締役は「出席者が少なかったと感じたが、改めて賛成も反対もあると分かった。市とも相談し、どういう方針で今後進めていけるかを改めて協議するとともに、いろんな意見を真摯(しんし)に受け止めながら進めたい」と述べた。
 戸田市長は市有地の賃貸に関し、「いろんな意見をいただき、事業所側の考えを聞いたうえで、市議会に説明してから最終的な結論を出したい」との考えを示した。