時代を超えた魅力凝縮 写真や方言ふんだんに 「大船渡三十六景」(別写真あり)

▲ 7月末の刊行を予定している冊子「大船渡三十六景」

 大船渡市大船渡町のキャッセン大船渡(田村滿代表取締役)が制作を進めてきた冊子「大船渡三十六景 OFUNATO36SCENES」が、7月末刊行の見通しとなった。大船渡を象徴する景色や事物の魅力を、色鮮やかな写真や方言などでまとめた。この冊子を生かしたキャンペーンも随時始める計画で、大船渡への来訪増や地域経済活性化につながる〝パスポート〟としての活用を見据える。

 

キャッセン大船渡制作

7月末刊行へ

 

 キャッセン大船渡は、JR大船渡駅周辺地区に整備された津波復興拠点整備事業エリアでの商業集積や運営などを担うまちづくり会社で、平成27年に設立。多彩なイベントや活性化策を展開する中で、大船渡に残る変わらない魅力を未来に伝え残していこうと「大船渡三十六景」の構想を膨らませてきた。
 発行は、キャッセン大船渡エリアの整備にエリアマネジメント・パートナーとして参画した大和リース㈱(本社・大阪府大阪市)。企画編集は松岡正剛事務所=東京都世田谷区=で、編集工学者で日本文化研究の第一人者とされる松岡氏は、各ページのエッセー執筆も担当した。撮影は、週刊ポスト誌上で連載された「新ニッポン百景」などで知られる太田真三氏が担った。
 大船渡に関する自然、文化、風景、事象の写真をレイアウトし、それらにまつわるエッセーを紹介。「地元の声」が響くように、方言や地域に伝わる唄や民謡を織り交ぜた。
 地元料理や菓子、建築物、構造物、歴史的資料など幅広い分野から選んだほか、震災後に整備されたかさ上げ地の日常となった味わいある風景も添えた。36の写真は六つの大きなテーマにまとめられ、テーマごとに通して読むと唄が完成する工夫も。巻末には、医師で方言研究に半世紀以上を費やしてきた盛町の山浦玄嗣氏に「ケセン語の可能性」を尋ねたインタビューも盛り込んだ。
 A4変形型の96㌻、フルカラー。7月末に約2000部の発行を予定している。図書館などへの寄贈を計画しているが、当面は一般販売の予定はなく、クラウドファンディングの賛同者やツアー来訪者らへの配布を計画している。
 7月から始めるクラウドファンディングでは、2000円以上の賛同者への「リターン」として冊子寄贈に加え、金額に合わせて市内での宿泊チケットや商品詰め合わせ、ツアーなども用意し、来訪者増につなげる。
 また、写真展や「大船渡三十六景を巡る旅」の開催も検討。講演会や、学校などでの「それぞれの三十六景」づくりなど、多方面での広がりを見据える。
 田村代表取締役は「観光では景色も大切だが、そこに誰がいるかや、そこにいる人に会いたいと思うことが重要」と話し、冊子を生かした交流拡大に期待を込める。冊子に関する問い合わせはキャッセン大船渡(℡22・7910)へ。