交流事業のオンライン化着々 大学生向けにネット講義 マルゴト陸前高田

▲ テレビ会議システムを使ったオンライン講義で講話した岡本代表理事

 陸前高田市の一般社団法人・マルゴト陸前高田(伊藤雅人代表理事)は、新型コロナウイルス感染防止のため、交流人口拡大を図る一部事業のオンライン化に取り組んでいる。6月は、当初同市でのフィールドワークを予定していた清泉女子大学(本部・東京都)の学生を対象に、陸前高田の産業や防災の取り組みなどを学ぶオンライン型講義を5回に分けて実施。「ウィズ・コロナ時代」の中でいかに事業を継続できるか模索している。

 

感染リスク軽減へ手法模索

 

 認定NPO法人・桜ライン311(岡本翔馬代表理事)の事務所で6月29日、オンライン講義の講師を引き受けた岡本代表理事(37)が、パソコンの画面に向かって約1時間講話した。
 同法人は、陸前高田市に甚大な被害をもたらした東日本大震災の教訓を後世に伝えようと、市内全域の津波到達点総延長約170㌔にサクラの木を植える活動に取り組む。
 岡本代表理事は、次世代の命を守るために始めた取り組みの目的や意義、今後の目標などを法人代表としての苦悩ややりがいも交えつつ率直に伝えた。パソコン画面の向こう側では、清泉女子大文学部地球市民学科の2~4年生約30人が、テレビ会議システムを使って聴講した。
 オンライン型の講義は、同大による「陸前高田フィールドワーク」の一環として企画されたもの。8月に地球市民学科の学生が陸前高田市を訪れ、復興への現状を直接見学する計画だったが、新型ウイルス感染症の影響で中止となったため、コーディネート役のマルゴト陸前高田とともに代替の学習コンテンツを模索してきた。
 講義は6月1日から29日までに計5回開催。岡本代表理事のほか、長洞元気村(広田町)の村上誠二事務局長、市職員、観光物産協会職員、県外からの移住者らが、内閣府から市が認定を受けた「SDGs未来都市」や防災、観光などをテーマに講話し、学生たちは陸前高田の魅力やなりわい、地域の課題を探った。
 学生たちは夏休み中の8月下旬、インターネット中継で市内の現状を視察する「バーチャル・フィールドワーク」も行う計画。マルゴト陸前高田のスタッフが、市内の震災遺構や新たな公共施設に加え、陸前高田ならではの暮らしや文化を感じられるスポットを案内する。
 マルゴト陸前高田によると、同法人が手がける学習ツアーや研修の利用客数はこの5年間で5万人を超える。今後は、新型ウイルスの感染リスク軽減を図りつつ、地域と外部の人をつなげるべく、事業のオンライン化にも力を入れていく。
 同法人の古谷恵一理事(32)は「オンラインという手法に変わっても、自分たちの伝えたいこと、参加客に感じてもらいたいことは何も変わらない。清泉女子大の学生に、陸前高田の素晴らしさ、地域の人たちの魅力を伝えられるよう、つなげる役目を担いたい」と意欲を語った。