「買い物支援」スタート 地域の高齢者を送迎 吉浜助け合い協と愛生会(別写真あり)
令和2年7月11日付 3面

大船渡市三陸町吉浜の吉浜地区助け合い協議会(伊藤信也会長)による「高齢者買い物送迎車運行事業」は10日、スタートした。同協議会と地元の社会福祉法人愛生会(佐藤次夫理事長)が連携し、同法人が運営する障害者支援施設・吉浜荘が車両と運転業務などの面で協力。初日は地区内の高齢者2人が利用し、地域住民のボランティアからサポートを受けながら、立根町内の商業施設で買い物を楽しんだ。同事業は今後、お盆と年末年始を除く毎週金曜日に行われる。
同協議会は平成28年、高齢者の社会参加を通じた介護予防の推進、住民運営の通いの場の充実、多様な生活支援の充実などを目的に設立。これまで、世代間交流となるたこ揚げ大会や夏休みのラジオ体操、住民交流の場となるサロンの立ち上げ支援などに取り組んできた。
こうした中、地区内には生鮮食料品等を取り扱っている店舗がなく、移動手段を持たない、または自宅から最寄りの公共交通機関までの距離がある高齢者らの買い物の場確保が課題となっていた。
同協議会は、社会福祉法の改正で社会福祉法人に地域貢献活動が義務化されたことなどを背景に、今年1月、愛生会に「高齢者買い物送迎車運行支援に関する要望書」を提出。両者で調整を進め、2月には「高齢者買い物送迎車運行事業に関する協定」を結んだ。
協定では、事業実施に当たって吉浜荘の7人乗りワゴン車1台を買い物送迎車両として運行することなどを取り決めた。運転は吉浜荘職員が務め、地区内の利用者自宅付近から立根町内にある商業施設の間を往復。燃料費や車両保険などは、法人側が負担する。
締結後、同協議会では運行に向けて地区内から利用者や有償の添乗員ボランティアを募集。利用者6人、ボランティア5人、同協議会の生活支援コーディネーター2人で4月に「買い物ドライブサロン」(白木澤節会長)を立ち上げ、市の市民活動支援事業補助金も受けて活動を進めることとなった。
当初は4月からの事業実施を予定していたが、全国で新型コロナウイルスの感染が拡大。同協議会では利用者やボランティアらの意向を受けて感染拡大防止のために開始時期を延期し、この日ようやく初運行を迎えた。
初日は、吉浜駅で吉浜荘の車両がボランティア1人を乗せて出発。利用希望者を自宅まで迎えに行き、乗車時には検温や手指消毒など新型ウイルスの感染予防策も実施した。
車両は利用者全員を乗せたあと、三陸沿岸道を経由して立根町内の商業施設に到着。利用者らは、ドラッグストアやスーパーマーケットなどで必要な食料品、生活用品を購入。ボランティアのサポートも受けながら、約1時間の買い物を楽しんだ。
白木澤会長(74)は「吉浜には生鮮食料品を買える場所が少なく、こういう形で買い物ができるのは便利。こうした事業はとても大切であり、ぜひ続けてほしいし、利用者も多くなっていけば」と話し、吉浜荘の協力に感謝した。
吉浜荘の佐々木伸介施設長(69)は「初めての運行となり、今後は課題も出てくるだろうが、それを改善しながら地域の役に立てるよう頑張りたい」と意欲。
同協議会の新沼秀人事務局長(68)は「ボランティアの方々からは『必要な事業であり、細く長くやってほしい』と言われている。今後は1人暮らしや運転免許を返納する高齢者の方々が増えていくと思う。利用者数が少なくても、細く長く取り組んでいきたい」と継続を誓っていた。
買い物ドライブサロンでは今後、新型ウイルスの状況も見ながら利用者やボランティアとの交流機会創出も見据える。利用者やボランティアは地区内から随時募集しており、会費は1人当たり月額1000円、年間1万2000円で、添乗員ボランティアの報酬や会員間の交流に活用する。
問い合わせは新沼事務局長(℡090・9740・5414)へ。