9年4カ月経て引き渡し 住宅建築ほぼ予定なく 今泉「かさ上げ1」の宅地

▲ 宅地引き渡し会が行われた今泉地区のかさ上げ部

 陸前高田市の被災市街地復興土地区画整理事業で整備された、気仙町今泉地区「かさ上げ1」の宅地引き渡し会が19日に現地で行われた。対象となったのは38宅地(権利者36人)。気仙川右岸に位置し、東日本大震災の津波で大きな被害を受け、平均で7㍍のかさ上げを施したうえで設けられたもの。発災から9年4カ月余を経た中で、多くの住民が町内外の別の場所で住まいの再建を果たすなどしており、同日引き渡しを受けた土地に再び住宅を設けるという人はほとんど見られなかった。

 

他地区での再建など背景に

 

 同市では今泉、高田両地区で被災市街地復興土地区画整理事業を展開。平成24年9月にそれぞれ高台の先行地区合わせて約56㌶で事業着手し、26年2月には合わせて約300㌶に拡大。工事を進めながら順次宅地を引き渡している。
 このうち、今泉地区での宅地の引き渡しは、29年7月に山林を造成した「高台6」を振り出しに行っている。この日対象となった「かさ上げ1」は、姉歯橋上流部の気仙川右岸に位置し、全体面積は約2・9㌶。低いところで5㍍、高いところで8㍍の盛り土を施して整備した。
 午前中は梅雨の晴れ間に恵まれ、権利者31人がその家族などとともに現地に足を運んだ。それぞれの宅地で、市や事業を受託するUR都市機構の職員らから、造成の仕上げ状況をはじめ、境界標や水道、擁壁の設置場所などについて説明を受けた。 
 発災から9年4カ月余を経た中、ほとんどの世帯がすでに町内外に新居を設けるなどして生活。引き渡し会に訪れた人からは、この土地に再び家を建てるという声がほとんど聞かれなかった。
 現在、小友町内で暮らす菅野敦見さん(75)は「地元に戻りたい気持ちはあったが、当初は仮設の入居期間が原則2年といわれ、造成に時間がかかるだろうということや自分の年齢も考え、別の土地で再建を急いだ」といい、引き渡しされた土地については賃貸を考えている。
 会社経営・菅野与一さん(73)は、町内の高台に新居を構え、一昨年転居。「震災時は家族と一緒に津波から逃げた。ここにまた家を建てる気にはなれなかった。畑として使いながら、借りたい、買いたいという人があればそうしたい」と話し、「このあたりの中井町内会は50世帯以上あった。自分も含めてだが、戻って住む人がほとんどいないのは、さみしい」と、周辺の土地を見つめていた。
 同市の復興土地区画整理事業区域内では、被災からの時間経過や権利者の高齢化といった背景から、利用予定のない土地の割合が高くなっている。
 これを受け、市では平成31年1月から「土地利活用促進バンク制度」を運用開始。今泉、高田両地区の土地区画整理事業地区内のかさ上げ地などについて、土地所有者と利用希望者を結びつけるため、市が双方への連絡や調整を行うもの。土地利用者に対する助成制度も創設しながら所有者と利用希望者のマッチングを図っているが、成約は20件に満たない。
 市によると、今回引き渡しを迎えた今泉の「かさ上げ1」では、権利者の半数以上が同バンクに登録し、土地の売買または賃貸を希望しているという。
 今泉、高田両地区では今年中にすべての宅地の引き渡しが完了する見込み。「未利用民有地」のあり方は、ハード面の復旧・復興完遂後も大きな課題となっていきそうだ。