ともに記憶と教訓伝える 福島の震災伝承施設職員 震災津波伝承館を訪問(別写真あり)
令和2年8月7日付 7面

9月の開館を予定する福島県の東日本大震災・原子力災害伝承館の職員らが6日、陸前高田市にある東日本大震災津波伝承館を訪問した。同館のオープンを前に、施設運営や展示解説の参考にしようと訪れたもので、館内の視察や津波伝承館職員らとの意見交換を実施。両施設の職員らは、互いの地域の被害状況や震災を伝承する必要性などを確認しながら、ともに〝あの日〟の記憶と教訓を後世に伝えていこうと誓い合った。
来月のオープンを前に
福島の東日本大震災・原子力災害伝承館は、災害の記憶と記録を後世に伝え、復興に向けて力強く進む福島県の姿や、これまで国内外から受けた支援に対する感謝の思いを発信しようと、同県が双葉町に整備。福島だけが経験した原子力災害の被害状況や住民生活の変化、長期化する影響なども発信する施設となり、9月20日(日)の開館を目指している。運営は、県から指定管理を受けた公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構が担う。
今回は、開館に向けて施設運営や展示解説の参考にしようと、今年3月まで陸前高田市の東日本大震災津波伝承館に勤めていた平本謙一郎さん(52)ら原子力災害伝承館・企画事業部事業課の職員7人が訪問。一般財団法人3・11伝承ロード推進機構の職員2人も参加し、津波伝承館では熊谷正則副館長と齋藤里香上席専門学芸員が対応した。
セミナールームでの顔合わせでは、熊谷副館長が「施設の管理運営の参考にしてもらいたい」と福島からの一行を歓迎。出席者らによる自己紹介、津波伝承館の概要説明が行われた。
その後、齋藤学芸員の案内で館内を視察。齋藤学芸員は、津波伝承館の特徴や展示の意図、来館者らに伝えていることなども交えながら説明し、「施設で見たつもりにならないよう、ほかの地域にも足を運んでもらうよう呼びかけている」などと、解説時の注意点などにも言及した。
福島の職員らは「公募で決めたものはあるか」「シアターは常にオープンしているか」などと、展示や運営での気になる点も質問。開館準備、今後の運営に役立てていこうと熱心に耳を傾けていた。
原子力災害伝承館でアテンダントを務める横田善広さん(60)は、「津波伝承館は映像、写真が時間軸に沿って展示されていて、来館者にとって分かりやすい展示になっていた。時間の経過とともに被害の変化を示し、さらに今後の自身の生き方、コミュニティーづくりに生かしていくかにまで触れられており、来館者の思いを育てていくいい施設。今後の参考にしていきたい」と話していた。
熊谷副館長は「被災地域の事情が異なるだけに、それを持ち寄って発信していくのは非常に意義がある。今後は福島をはじめ、宮城県石巻市にできる伝承施設と協力をし合って情報発信をしていきたい」と、新たな連携に期待を寄せていた。