健康調査結果の閲覧可能に 適切な診断・治療に活用 未来かなえ機構
令和2年8月8日付 1面

岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM、佐々木真理機構長)と、気仙の医療機関などでつくる一般社団法人・未来かなえ機構(滝田有代表理事)が情報提供の連携について契約を締結した。今月下旬から、IMMが実施する地域住民コホート調査(健康調査)結果の一部について、調査参加者の同意をもとに未来かなえ機構が運営する気仙医療圏の地域医療情報ネットワーク「未来かなえネット」に情報提供する。未来かなえネットに参加する医療機関等の専用端末で健康調査結果の閲覧が可能となり、適切な診断や治療に活用できる。
IMM(いわて東北メディカル・メガバンク機構)と契約締結
今月下旬から情報提供
IMMは、東日本大震災の復興支援事業である東北メディカル・メガバンク計画の一環として、文部科学省、復興庁、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(三島良直理事長)の支援のもと、平成25年度から本県の被災地を中心とした大規模健康調査を行い、地域医療の復興に貢献するとともに、個別化医療等の次世代医療体制の構築を目指している。
調査参加者の健康維持・増進のため、健康調査結果をまとめた報告書を冊子にして一人一人に返却。加えて、各地域の医師会の協力を得て、受診可能な医療機関情報を掲載し、査値に異常がみられる人の受診を勧めているほか、健康調査結果の統計情報を各自治体に提供するなどして被災地域における健康づくりを支援している。
健康調査は平成27年度末まで実施し、県内で合計3万2913人、うち気仙医療圏(大船渡市、陸前高田市、住田町)は6908人が参加。
その後、29年度から2回目の健康調査(詳細2次調査)を開始し、今年7月末日現在で2万2436人(うち気仙医療圏5352人)が参加している。
近年、地域における医療・看護・調剤・介護などの連携や災害時の医療情報の保全などを目的に、地域医療情報ネットワークの導入が各地で進む。
気仙医療圏では、未来かなえ機構が平成27年4月に一般社団法人として発足。参加施設間で情報を共有し、住民により安心・安全な医療・福祉・介護サービスを届けることを目的として未来かなえネットを運用している。
その利活用推進の一環として、地域住民コホート調査結果の一部の情報提供を今月下旬から開始する。
情報提供の対象は、27年度までの気仙医療圏の健康調査参加者のうち、詳細2次調査に参加し、かつ情報提供について同意した人。
未来かなえ機構は、同意者リストを暗号化USBでIMMに送付。IMMが同意者リストに基づき、結果報告書を外部インターネットに接続されない端末で抽出し、暗号化USBで未来かなえ機構に移送する。
未来かなえ機構が専用端末で未来かなえネットに結果報告書を登録すると、同ネットに参加している医療機関等の専用端末で結果報告書の閲覧が可能となる。
本人が同意しない場合、結果報告書は未来かなえネットに登録されない。詳細2次調査の血液・尿検査、アンケート調査、生理機能検査の結果報告書のうち、本人が情報提供について同意した結果報告書のみが対象となっている。
これにより、調査参加者が医療機関を受診した際、医師が健康情報や病状の変化を把握して適切な診断や治療に生かすことができるほか、過剰な検査を防ぐことで患者の苦痛軽減や医療資源の節約につながることも期待される。
IMMと未来かなえ機構では、「この連携は大規模調査研究の地域への貢献や成果還元の在り方、地域医療情報ネットワークの利活用のモデルの一つとして非常に重要。今後、他の地域への波及も期待できる」としている。