町長任期満了まで1年切る 木工団地対応など課題山積 現職・神田氏

神田謙一氏

 住田町長の現職・神田謙一氏(61)=下有住=は、1期目の任期満了(来年8月4日)まで残り1年を切った。7月31日には、多額の公金融資が行われた木工団地内2事業体が破産申請を行っており、今後の対応における行政手腕を町民がどう捉えるか、正念場の1年となりそうだ。こうした中、同氏は次期について「後援会と相談しながら判断していきたい」と明確な態度は示していない。ほかに新人擁立に向けた動きはなく、現職の意思表明とともに今後の動向が注目される。

 

次期への判断「後援会と相談」

 

 神田氏は日本獣医畜産大学大学院修士課程修了。昭和59年に住田町農協に入り、合併した陸前高田市農協を経て、平成19年住田フーズ㈱取締役生産部長。24年同社常務取締役に就いた。
 4期を務めた多田欣一氏(75)=世田米=が勇退を表明し、16年ぶりに「新リーダー」を選ぶこととなった平成29年の町長選に初出馬。
 企業経営にかかわってきた人脈と経験を生かし、多田氏後援会とも連動しながら支持を訴え、町議を辞して臨んだ水野英哉氏(65)=上有住=との一騎打ちを144票差という僅差で制した。
 神田氏は就任後、「住民生活の基本である『医・食・住』の充実」を掲げ、町政運営に取り組む。「医」では訪問看護ステーション設置など、「食」では遊休農地で飼料用トウモロコシの栽培実証を行い耕畜連携にも取り組んできた。「住」では、新たな町営住宅整備に関する契約が今年7月の町議会臨時会で議決されるなど、これまでの3年で〝神田カラー〟も打ち出している。
 一方、前町長時代からの町政課題である木工団地2事業体の問題では、町として平成29年11月に両事業体や連帯保証人に立木未収金を含めた計10億円超の支払いを求める調停を大船渡簡易裁判所に申し立てたが不調に終わり、その後の債権回収も進まなかった。
 こうした中、2事業体は今年7月31日付で盛岡地裁一関支部に破産を申請した。大半の従業員は工場が隣接するけせんプレカット事業協同組合が雇用。同組合では、雇用を守る観点から両事業体が担っていた製材、集成材事業を行うことも選択肢の一つとしている。
 これについて神田氏は「事業一本化による成長への前進」と捉えている。「森林・林業のまち」の根幹をなす事業の継続と雇用確保には一定の見通しが立った一方、両事業体への町の債権額は合わせると現段階で約10億6000万円で現時点で回収の見込みは不透明だ。
 また、町内では毎年約100人ずつ人口減少が続き、特にも生産年齢人口の女性の割合は県内最低水準。農業者の高齢化や後継者不足、耕作放棄地の増加も進行しており、さらには新型コロナウイルス感染症への対応など、課題は文字通り山積みとなっている。
 本年度からは新たな町総合計画がスタートしており、大事な走り出し時期のかじ取り役として、神田氏の「再選出馬は必至」とする声もあるが、同氏は「後援会と相談しながら判断していきたい。現時点では木工団地という長年の課題解決が中心となる。このほかにも長期、短期の課題があり、その〝解決度合い〟も判断材料にはなってくる」と述べるにとどめている。
 前回選に出馬した水野氏は「次期の出馬は考えていない」としており、同氏のほかにも対抗馬の動きは現段階では見られない。町内からは「木工団地問題にめどがつくまでは、新人は名乗りを上げづらいのではないか」との声も聞かれ、当面の動きが注視される。 

 任期満了に伴う選挙は昭和30年の町制施行から18回目となる。平成29年の前回選挙は「7月18日(火)告示、同23日(日)投票」の日程で行われており、同様に7月下旬の日曜日の投票が有力とみられる。
 8月1日現在、同町の有権者数(18歳以上)は4653人(男2276人、女2377人)。前回選の投票日と比べて379人少ない。