建設による影響を指摘 専門家が予定地を視察 吉浜での太陽光発電事業(別写真あり)

▲ 梨木氏(左から3人目)が太陽光発電所の建設計画地を視察

 大船渡市三陸町の越喜来、吉浜を中心とした地域住民有志らは10日、一般社団法人日本草地畜産種子協会の放牧アドバイザー・梨木守氏(67)=盛岡市=を招き、民間事業者が太陽光発電事業を計画する吉浜の大窪山を視察した。梨木氏は太陽光パネルの設置が予定される牧草地の現状、周辺環境などを確認し、発電所建設による植生や土壌への影響を指摘した。
 太陽光発電所は、市が所有する大窪山の牧場跡地(事業用地約98㌶)に計画。発電容量は37メガワットで、年間総発電量は約3万5000メガワットアワーとなっている。
 事業計画を巡っては、市が地球温暖化抑止や自主財源の確保などを理由に事業推進の考えを示している。一方、市民側は賛否が分かれており、6月に市が行った事業説明会では、建設予定地の土壌や地形などに懸念を抱く市民から、専門家による調査を求める声が寄せられていた。
 住民有志らは、太陽光パネル設置が現状の芝草地に与える影響と、設置工事による芝草地土壌への変化などを調べてもらい、工事が行われた場合の対策も検討しようと畜産、草地を専門とする梨木氏を招へい。この日は視察と報告会が行われ、市民ら約20人が参加した。
 はじめに、梨木氏と参加者らが建設予定地を視察し、現地の植生や気象条件などを確認。有志らは4㍍四方のビニールシート2枚を太陽光パネルに見立てて並べ、設置された状態をイメージした。
 視察後は、吉浜の中通手前みそセンターで報告会を開催。梨木氏は建設予定地の植生について、「シバ、ハルガヤ、イグサの類、スゲの類、白クローバー、ススキなどが見受けられた。これらの植物は、光が十分に当たることで現状が維持される。それから、霧が出たり、風が強いために木が生えていなかった」と説明した。
 太陽光パネル設置による影響に関しては、「パネルの高さにもよるが、設置されると光が当たらないところは今の植生が衰退していき、そこに日陰を好むような植物が生えるかもしれない。それが地面を覆ってくれればいいが、植物が育たないと裸地になり、大雨で水がたまって流れるようになると浸食を受けやすい」と指摘。
 草地の下は崩れやすい真砂土であるため、植生の変化や降雨の状況によっては土砂崩れにつながる危険性にも言及した。
 そのうえで、「パネルを設置し、浸食が起きた場合にどのような手だてをとれるのか、(事業者側などと)約束をしなければならないのではないか」と助言。また、草が茂ると植物の生態に影響が及び、裸地ができやすいとして、「パネルを設置した場合には、年に2回は刈り払いを行うべき。作業をきっちりやるよう事業者側に求めた方がいい」と述べた。
 参加者らは、梨木氏の報告に耳を傾け、質問や意見交換も行いながら建設予定地の現状に理解を深めていた。