海洋ごみ対策で新事業 廃プラスチックなど処理促進へ
令和2年8月13日付 1面

海洋ごみによる海岸機能の低下や環境・景観の悪化、船舶航行の妨げなどが懸念されている中、大船渡市は本年度、環境省による海岸漂着物等地域対策推進事業を導入して新たな対策に乗り出す。市内の各漁港には10月以降、漂流ごみなどを回収するコンテナを設置。漁業者らにボランティアで回収を託し、処分は市が担う。漂流ごみの拡散防止を目的とした可搬式オイルフェンスの整備も計画している。
各漁協に回収用コンテナ
同事業は、都道府県や市町村が実施する海洋ごみ対策に補助金を交付。市町村での実施に向けては、各都道府県が地域計画をまとめる必要があるが、岩手県では昨年度に策定。市ではこの事業を生かし、これまで継続してきた漁場の漂流・漂着ごみの除去回収に加え、新規事業を盛り込むことになった。
その一つが、漁場美化推進事業による回収用コンテナの設置。漁業者が各漁港での活動中に、廃プラスチックや木くずなどの漂流ごみを回収し、投げ入れる流れを目指す。廃タイヤや金属くず、ガラスくずなども対象とする。
こうした海洋ごみはこれまで、市や県など、漁港を管理する機関が処分。コンテナ設置により、漁港内だけでなく漁業者が操業する海域広範囲での回収が期待でき、さらなる航行の安全確保や環境美化を見据える。
処分自体は市が担い、回収ごみに入れた状態で保管。塩分などを抜いてから回収を行う。コンテナ容量は1台約8立方㍍で、全30台を想定。10月からの設置を見据え、場所は市内各漁協と協議する。回収コンテナの設置は、県内でも例がないという。
可搬式オイルフェンスの設置も、本年度から始める新たな取り組み。漁港等に流入した漂流ごみが漁場へ再度流出するのを防ぐもので、市内各漁協に配備する。本年度は200㍍分を導入予定。来年度以降、順次追加を検討する。
市農林水産部水産課では「世界的にSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みが広がり、海洋のプラスチックごみの問題が取りざたされている。市としても対策を推進していきたい」としている。
これまで実施してきた漁場環境保全事業は、本年度も行う計画。まとまった降雨などで海域にごみが流入した場合、養殖水産物や養殖施設の影響を最小限にとどめるため、漁場での除去回収作業を市内沿海漁協に委託して実施する。
また、漁船の停泊や航行の支障となる流木等、市管理漁港に漂着した海洋ごみを撤去・処理する漁港漂着物等処理事業も継続。清掃船「さんご丸」による大船渡湾内の浮遊ごみの回収、処理も、引き続き実施する。