東日本大震災 亡き人に思いはせて 手書きの犠牲者名簿作成 荘厳寺の髙橋住職

▲ 手書きの震災犠牲者名簿を作成した髙橋住職㊨と名簿を眺める松野総代長

 陸前高田市竹駒町の功徳山・荘厳寺(髙橋月麿住職)で現在、髙橋住職(74)が手書きで作成した、気仙3市町の東日本大震災犠牲者名簿を本堂内に掲示している。時折、檀家(だんか)や地域住民らが訪れ名簿を眺めていくといい、「亡くなった方の名前を見て、その人に思いをはせる場所になってほしい」と願いを込めている。

 

気仙3市町合わせて1847人分

本堂内に掲示

 

 昨年4月、青森県八戸市から陸前高田市に移住した髙橋住職。今年4月には、昨年から病気療養中だった三宮憲定前住職に代わって住職となった。
 震災犠牲者名簿の作成は、髙橋住職が約1年かけて行ってきたもの。「復興が進むまちの様子を見たり、檀家らから震災当時の陸前高田の状況を聞き、震災津波の恐ろしさや被害の甚大さを思い知らされた。僧侶にできることを考え、大切な人を亡くした遺族の気持ちが少しでも和らぐようにと思い、犠牲者供養の意味も込めて、名簿を作ることを決めた」と語る。
 髙橋住職は、発刊されている震災記録集やインターネットなどで気仙3市町の犠牲者を調べ、1枚の半紙に13人ずつ筆書き。市町ごとに分類し、3市町合わせて1847人分の名前と年齢を約1年かけて手書きしてきた。
 毎朝の勤行では、犠牲者の名前を読み上げ祈りをささげているほか、昨年7月からは月命日である11日に合わせ、「東日本大震災追善供養会」として、毎月法要を実施。今月11日にも営まれ、同寺の松野弘総代長(77)などが参列。髙橋住職が読経をささげたあと、地震発生時刻の午後2時46分には参列者らが鐘楼(しょうろう)に登って梵鐘(ぼんしょう)を鳴らし、犠牲者の鎮魂を祈った。
 また、「誰でも見に来ることができるように」と、本堂の壁に名簿を掲示。松野総代長は「震災から10年目を迎え、当時の記憶の風化は進んでいる。こういった取り組みは、改めて震災と向き合うきっかけになるのでは」と語る。
 髙橋住職は「名簿の中には、若くして亡くなった方もいる。今を生きる私たちにできる一番の供養は、震災犠牲者を思い続けること。この名簿を見て、亡くなった大切な人の表情や、ともに過ごした時間を心に思い浮かべ、その人に思いをはせる場所となってくれたら」と願っていた。