クマ対策に留意を 気仙でも出没相次ぐ
令和2年8月21日付 7面

県内で今年も人里付近へのツキノワグマの出没が相次いでいる。例年、特に6月から8月にかけて目撃情報が増える傾向にあり、この夏は気仙地区でも多く寄せられている。今週に入ってからは、大船渡市三陸町越喜来の住宅が2回続けて侵入され、冷蔵庫などを荒らされるという被害もあった。活動が活発な時期とあって、県や市町などでは、被害の未然防止に向けた個々での対策を呼びかけている。
大船渡では住宅侵入も
県内の山林はそのほとんどがツキノワグマの生息地とされる。近年は人里付近への出没が相次いでおり、その背景としてえさとなるドングリなど堅果類の豊凶だけでなく、古くから人と野生動物の緩衝帯となってきた里山の荒廃も指摘される。
例年、冬眠明けの活動期を迎える4月から目撃が増える。県環境生活部自然保護課では、今年は積雪量が少なく冬眠明けの活動が早まり、春先から人里への出没が予想されるとして、3月中に県内全域に「ツキノワグマに関する警報」を発表し、警戒を呼びかけてきた。
県のまとめによると、今年の全県での出没は4月149件、5月373件、6月619件と推移。過去5年の平均は4月122件、5月376件、6月595件で、今年は5月を除いて上回っている。7、8月も過去5年平均(7月=531件、8月=539件)に近い数字になるものと推測される。
気仙では今年、5月に入ってから目撃情報が相次ぎ、各市町ではその都度、防災行政無線などで注意を呼びかけている。
この中、今月18日朝、大船渡市三陸町越喜来字杉下地内で、民家が荒らされているのが住人によって確認された。さらに同日夜にも再び侵入し、台所などを荒らされた。住人にけがはなかった。
この地域は背後が山林の住宅地。先週からクマの目撃が相次ぎ、畑が荒らされる被害も続出しているが、住民たちは「家に入るようなことはなかった」と声をそろえる。
市では侵入された民家の敷地内に箱わなを設置し、大船渡警察署ではパトカーで警戒広報を展開。越喜来小学校では保護者にメールで注意を呼びかけ、児童の下校時に教職員が引率するといった対策もとるなど、地域ぐるみで警戒を強めている。
県内のツキノワグマによる人身被害は今月5日現在で11件発生しており、県や市町村などが注意を喚起。
人里においては▽廃棄果樹・農作物などの管理を適切に▽庭先果樹や家庭菜園で、利用しない場合の早期摘果▽屋外やクマが侵入できる納屋に果物、穀物、ペットフードなどを保管しない――といった対応を求める。
また、山林に入る場合は▽クマ鈴や笛、ラジオなど、音の出るものを携帯する▽複数人で行動し、見通しの悪い場所や沢沿いでは掛け声や音を出し、人の存在をクマに知らせる▽クマの目撃情報や新しい痕跡(糞や爪痕)のある場所は避ける――といった対策を呼びかけている。