住民懇で改めて説明 「総合判断」理解求める 吉浜太陽光発電事業計画で市長
令和2年8月23日付 1面

反対意見も推進姿勢堅持
大船渡市は21日夜、旧吉浜中学校体育館で行われた「復興後のまちづくりに向けた市政懇談会」で、吉浜地区太陽光発電事業計画について説明し、地域住民らと意見交換を行った。事業に反対する住民からの、地域同意のあり方を追及する発言に対し、市側は土地所有者である市が先頭に立って住民説明を行い、理解を求める姿勢を強調。戸田公明市長は、従来の推進姿勢も掲げたうえで「総合的判断をさせていただきたい」と述べた。
市政懇談会は先月16日から地区別に開催。市によると、吉浜地区では「住民が関心を抱いており、より理解を得たい」との考えから、総合計画に関する懇談に続き、太陽光発電事業計画に関する説明と意見交換を行う時間を設けた。
住民48人が出席。戸田市長や志田努副市長、担当各部長に加え、オブザーバーとして事業を計画する自然電力㈱(本社・福岡県福岡市)太陽光事業部マネージャーの高田尚昌氏と、エンジニアリング部の門中章二氏らが臨んだ。
自然電力側は、6月の説明会で示した整備計画や自然環境保全策を改めて説明。戸田市長も▽地球温暖化抑止への参加・貢献▽未利用市有地の有効活用▽市税収入、市有地賃貸料で自主財源の確保──などを理由に事業実施の必要性を挙げた。
意見交換に入り、住民の一人は「これまで事業者と市が交わした同意書に盛り込まれていた『一地域でも反対していれば事業は進めない』との文言はどうなるか」と指摘。吉浜での整備は反対姿勢を強調した。
志田副市長は平成28年の同意書は荒金山だけの整備、同30年には荒金山と大窪山にまたがった計画に変更したものに対して交わしたものと説明。「今回の計画は(ソーラーパネルは)荒金山をやめ、大窪山だけの計画。これまでは最終判断を住民側に委ねることになり、意見が分かれ、地区内に混乱を生じる結果になったのは遺憾。市が主体的にかかわり、地域ごとの判断を待つのではなく、住民の皆さんの理解を得るべきだったと反省している」と述べた。
その後も複数の住民が、同意書のあり方を巡り発言。戸田市長は「もともと市の土地であるが、市はこれまで、事業者に吉浜の皆さんから同意を得てほしいとお任せしてきた。本来は市が先頭に立って説明し、理解をいただくべきだった」と語った。
さらに「賛成と反対、さまざまな意見を一つ一つチェックしている。市として総合的に判断することが、地域を分断させないことと考えている。この事業が、地球温暖化防止のどのような位置づけでなされようとしているのかなどを踏まえ、総合的判断をさせていただきたい」と回答。自然電力の高田氏は、現計画が反対署名活動などの意見を踏まえて見直した内容であることに理解を求めた。
このほか、反対意見では建設地が吉浜川の源流部に位置することから、海洋環境保持や農業用水確保、景観保全などを強調する意見が目立った。一方で、懇談後半には「地球温暖化防止は、究極の自然保護。市長は信念を貫いてほしい」「将来展望を考えれば、得るものの方が多いのでは」と、賛成意見も続いた。
市長はこの場を通じて判断の結論は明言しなかったが、これまでと同様に事業効果などを強調し、推進方針を堅持。最後に「賛成、反対の立場でそれぞれ貴重な意見をいただいた。大船渡に悪かれと思って決断はしない。日本、地域、子孫が生き残る地球にとって良かれと思う決断をしたい」と語った。