生息定着の可能性高まる ツマグロヒョウモン 越喜来で産卵確認

▲ 越喜来に飛来したツマグロヒョウモンのメス(八幡さん提供)

産み付けられた卵(八幡さん提供)

 関東以南に分布するチョウの一種・ツマグロヒョウモンが大船渡市三陸町越喜来地内に飛来し、産卵した。ツマグロヒョウモンの産卵は近年、陸前高田市内で継続的に確認されており、越喜来地内でも今回、複数の卵が見つかったことから、同市立博物館では「気仙も生息地として定着している可能性が一層高まったのではないか」としている。
 ツマグロヒョウモンはタテハチョウ科で、羽はオレンジ地にヒョウ柄の文様がついており、メスは前翅(ぜんし)の先端が黒い。幼虫はパンジーやビオラといったスミレ科の植物を食べる。
 今回、ツマグロヒョウモンの産卵を確認したのは、越喜来在住の八幡諗子(つぐこ)さん(73)。22日から23日にかけ、自宅周辺のスミレにメスのツマグロヒョウモンが飛来し、卵を産み付けたという。24日朝の時点で12個の卵が見つかった。
 八幡さんは「おととしの12月に越喜来に越してきたが、こちらでツマグロヒョウモンを見たのは初めて。岩手はまだ生息地として定着していないチョウだが、まさか飛来するとは思っていなかった。以前に飼育をしたことがあるが、さなぎが美しい金色になるので成長が楽しみ」と話し、期待を寄せていた。
 ツマグロヒョウモンの観察を行っている陸前高田市立博物館によると、県内における同種の採集記録は昭和31年に盛岡市で、48年に旧川井村(宮古市)で残っている。気仙では平成17年、陸前高田市広田町と大船渡市末崎町で見つかった。
 陸前高田市ではその後、継続的に飛来が見られ、22年には気仙町で産卵を確認。米崎町などでもさなぎが見つかっているという。
 同館では「元々は南の地域から飛来するチョウだが、近年は温暖化の影響で気仙地域の平均気温も高くなっているため、継続的に観察されるようになっていると考えられる」と分析。さらに、「幼虫の食草であるスミレの仲間・パンジーなどの園芸種が各地で植栽されていることも、分布域の拡大、北上につながっているのではないか」としている。
 こうした温暖化や幼虫のえさの関係から、「ツマグロヒョウモンの分布が、この辺でも定着する素地はある。越喜来での産卵確認で、より一層気仙で定着している可能性が高まったと考えられる」とみている。