コロナ禍でも活用進む 校外学習での来館増加 東日本大震災津波伝承館(別写真あり)
令和2年8月28日付 1面

陸前高田市の東日本大震災津波伝承館では、2学期の学校活動が本格化してきた今月下旬以降、県内を中心とした校外学習での利用が増加している。特に、9月から12月にかけてはすでに85の小中高校から見学の予約が入っており、復興教育はもちろん、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う修学旅行先の変更を受けて利用するケースも少なくないという。27日には、開館以来の来館者が20万人に達した同館。今後、震災を知らない子どもたちが増えていく中で、震災の記憶と教訓を伝承する復興教育の場としての活用が、より進みそうだ。
修学旅行先の変更も一因
27日には来館者20万人に
同館は震災の教訓伝承、発災から復興までの状況と支援への感謝発信を目的に、県が高田松原津波復興祈念公園内に整備したもので、昨年9月22日に開館。多くの人々が津波のメカニズムや震災の教訓、復興に向かう人々の取り組みなどに理解を深めている。
また、県内の学校や教育委員会などへの訪問、教員研修会の開催など、復興教育による同館の利活用をPRする取り組みにも力を入れてきた。
新型ウイルスの感染拡大に伴い、4月12日から5月24日には閉館を余儀なくされたが、感染症対策を徹底したうえで同25日に再開。再開後の6月から今月は毎月1万人台の利用があり、今月27日には開館以来の来館者が20万人に達した。
再開後、同館には県内や東北の小中高校から見学の予約、問い合わせが増加。4月から8月の利用は約20校だったが、9月以降は県内の小学校を中心に予約が相次いでおり、現時点で同月から12月にかけて小学校54校(うち県外4校)、中学校26校(同8校)、高校5校が利用を予定しているという。
令和元年度(開館から今年3月末まで)の学校利用件数は小学校9校、中学校10校、高校16校で、本年度の予約状況は昨年度に比べて、小中学校で増加傾向にある。この要因には、PRの成果や県教委の副読本で同館が紹介されたことが挙げられるほか、新型ウイルスの影響で修学旅行の訪問先が仙台方面や首都圏から県内、東北の近場に見直されたことも大きいという。
27日には、山形県の南陽市立赤湯中学校(堀裕一校長、生徒298人)の3年生112人が修学旅行で来館。滞在時間が短かったため、ガイダンスシアター観賞と一部展示の見学にとどまったが、生徒らは真剣な表情で見つめ、被害状況や教訓に理解を深めていた。
白岩大和君(15)は、「震災は小さいころだったが、地震の揺れがすごくて怖かったのを覚えている。シアターを見て、沿岸部にいた子たちは何倍も怖い思いをしたのだと思い、津波をもっと知って対策をしていきたいと感じた。もっと震災や津波のことを知っていきたい」と語った。
同校では毎年、9月の第1週に東京方面への修学旅行を実施。当初は東京パラリンピックの見学などを予定していたが、パラリンピックの延期や新型ウイルスの感染状況を踏まえ、3泊2日で岩手県内を巡るコースに変更した。
実施にあたっては、復興教育と岩手の偉人などを学ぶ二つのテーマを設け、同館をコースに組み入れたという。堀校長は「学校に戻ったら振り返りを行う予定。生徒たちには岩手で学んだ震災からの復興や命の大切さ、身近な人を大切にする思い、感謝の気持ちにより理解を深めてもらいたい」と話していた。
熊谷正則副館長は「震災から10年目のいま、各学校に注目されているのは非常にありがたい。感染症対策を徹底して受け入れを図り、各校から評価を得て、繰り返し利用してもらえるように対応していきたい」と、さらなる利用促進に向けて気持ちを新たにしている。