サンマ初水揚げ 破格の高値 箱入り1㌔3250円も 大船渡市魚市場(動画、別写真あり)

▲ 初サンマの水揚げで活気に包まれた大船渡市魚市場

 大船渡市魚市場に29日朝、本州トップを切って秋の味覚・サンマが初水揚げされた。鎌田水産㈱(鎌田仁社長)所有の「第八 三笠丸」(松谷裕漁労長、199㌧)が北太平洋の公海で漁獲した約4㌧で、昨年初日の水揚げ量23㌧を大幅に下回った。箱詰めと、タンクに移された生サンマそれぞれの入札が行われ、1㌔当たりの価格は3250円~1500円。最高値は前年の3倍超となり、かつてない状況下でのスタートとなった。

 

数量は昨年の2割以下
公海で漁獲の大型船入港

 

 「第八 三笠丸」は約1700㌔離れた公海から3昼夜かけて戻り、29日午前5時30分ごろに入港。4㌔入り、8㌔入りの発泡スチロール箱を乗組員らが手渡しで岸壁に上げたあと、網ですくい出されたサンマがタンクに移された。
 松谷漁労長(60)=北海道釧路市=は「もっと漁獲できればいいが、魚影がない。40年サンマ漁をやっているが、年々少なくなっている。サンマだけを見ると、昨年よりは少し大きい感じもする。とにかく、これから上向くことを期待するしかない」と語った。
 場内では、買い受け人がタンクや発泡スチロールを囲み、じっくりと品定め。この日は140㌘未満の中~小型が主体だったが「大きいものも多い」「大きい、小さいは言ってられない。とにかく、これしかない中でどうするか」といった声が聞かれた。
 入札の結果、4㌔箱入りは1万3000円~6000円で取引され、1㌔換算では3250円~1500円。昨年は900円~821円で、最高値は3倍超に跳ね上がり、魚市場としてもかつてない価格となった。8㌔箱入りは1万5000円で、タンクは1㌔2100円~2080円だった。
 市内の鮮魚店などでは〝大船渡産〟がお目見え。赤崎町・下蛸ノ浦漁港では、事前予約制による期間限定のドライブスルー販売が始まったほか、産直施設では「初さんま焼き定食」も出ている。
 サンマ漁は今月解禁され、小型船も順次出漁しているが、例年漁場となっているロシア海域で漁獲がなく、主力となる100~199㌧の大型船は公海まで出向いて操業。それでも、まとまった漁には至らず、現時点では昨年を大幅に下回る数量で推移している。
 鎌田水産所有の大型船6隻は、今月17日に大船渡港を出港。20日の解禁に合わせて北海道から出漁し、6隻合わせた水揚げ量は29日時点で20数㌧という。
 鎌田社長は「きょうのサンマは、思ったより魚体がふっくらしていると感じた。漁場もできつつあるので、9月の中旬くらいから本格化してほしい。1隻で数十㌧程度の水揚げがあれば、大船渡に戻ってくることができる」と話し、期待を込める。
 昨年の大船渡へのサンマ水揚げ実績は前年比62・9%減の6448・7㌧で、金額は同35・2%減の20億2856万円。数量、金額ともに本州1位を維持したが、平成11年以来、20年ぶりに1万㌧を割った。
 水産業界にとどまらず、運輸や小売りなど幅広い分野に経済効果が波及するサンマ漁。水産加工業者で構成する大船渡湾冷凍水産加工業協同組合の森下幹生代表理事は「少しの量でも、初サンマを迎えれば新たな気持ちが出てくる。水揚げ量が4、5年前の水準に少しでも近づいてくれれば」と願う。
 大船渡魚市場㈱の千葉隆美社長は「遠方の公海から来てもらい、大変感謝している。漁況は良くないだろうが、大船渡はサンマの依存度が高いまち。とにかく、漁が好転してほしい」と話していた。