11月末のオープン目指す 今泉地区の現地で上棟式 商業施設の発酵パーク

▲ 完成への期待を込め現地で行われた上棟式

 東日本大震災で甚大な被害を受けた陸前高田市気仙町今泉地区で29日、商業施設「陸前高田発酵パークCAMOCY(カモシー)」の上棟式が行われた。震災前、しょうゆやみその醸造店が集中していた同地区の歴史を踏襲し、7店舗が「発酵」をキーワードとする食やサービスでにぎわいの創出を図っていく。開業は11月末を予定。
 発酵パークは、昨年6月に設立したまちづくり会社「醸(カモシー)」(田村滿社長)が整備する。建設地は、土地区画整理事業で造成されたかさ上げ地で、入居事業者の㈱八木澤商店(河野通洋社長)が所有。7月に着工した。
 雨の中、現地で行われた上棟式には、関係者ら約50人が出席し、完成への期待を込めた。餅まきも行われ、子どもたちが笑顔を見せた。
 同パーク整備は、地元住民らでつくる陸前高田・今泉地区明日へのまちづくり協議会の協議の中で構想が持ち上がった。今泉の伝統を継承しつつ、かさ上げ地を有効利用する産業創出、地域活性化の場を──とプロジェクトが動き出した。
 敷地は約1400平方㍍、建物は木造平屋で、床面積約600平方㍍。総事業費は約1億8000万円で、国の津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金を活用する。
 施設に入るのは▽パン店▽食堂▽総菜店▽チョコレート工房▽クラフトビール工房──などの7店舗。施設中央にはフードコート、キッチンスタジオを配する。席数はフードコートと施設前の屋外合わせて約90席分設ける。
 施設のそばでは、県指定文化財の「吉田家住宅(大肝入屋敷)」の復元が計画されており、震災前親しまれた蔵造りのまち並みを踏まえ、蔵が連なっているような外観に設計。建材には今泉のマツやスギ材を使う。
 周辺では、高田松原津波復興祈念公園内の道の駅「高田松原」や震災津波伝承館が、昨年9月にオープンし、多くの観光客らが訪れている。来年3月には、発酵パークと気仙川を挟んで対岸の今泉北地区に、外食チェーンのワタミ㈱(東京都)による農業テーマパーク「ワタミオーガニックランド」が一部開業する予定だ。
 田村社長は「今泉は発酵の文化が根付く全国的にも珍しい地域。陸前高田といえば、発酵のまちと認知されるような情報発信基地ともしていきたい」と話した。