震災9年半の地域課題/大船渡市政懇談会で見えた将来像は①

▲ トップを切って行われた盛地区の住民懇談会

 大船渡市は7月から8月にかけ、「復興後のまちづくりに向けた市政懇談会」を開催した。令和3年度を初年度とする総合計画の策定に向けて市民の思いを反映させようと、市内全11地区に戸田公明市長らが出向き、今後の市政運営の方向性や課題を示し、意見交換を行った。東日本大震災の発生からまもなく9年半を迎え、復興事業は終盤に入り、財政規模も〝平時〟の市政運営が求められつつある中、被災者や住民が抱える不安は多様化。懇談会での議論から、浮かび上がった課題や「ポスト復興」の将来像を考えたい。(佐藤 壮)


「復興の地」抱える不安 災害公営住宅

 

 「絶対に発言しようと思っていた。市はもちろんだけど、出席者や市議の方々にも現状を知ってほしかった」
 7月16日夜、トップを切って行われた盛町・カメリアホールでの市政懇談会。市側の説明が終わり、懇談中盤、同町の県営みどり町アパート自治会長やみどり町地域公民館長を務める飯島真由美さん(52)が手を挙げた。 
 「仮設暮らしの時、住宅再建か災害公営住宅の2択しかなかった。家を建てる必要がない人たちが災害公営住宅に望んで入ったのに、家賃が上がるとか、減免がなくなるとかで、どんどん若い世代が出ていっている。ついのすみかとして入っている人がほとんどで、出たくて出る人はいない。家賃は、市の条例とかで何とかならないか」
 平成27年末から28年春にかけて完成したみどり町アパートは3棟、147戸からなり、災害公営住宅団地としては市内最大規模。一時は被災者だけで、入居戸数は140世帯を超えていた。飯島さんによると、現在は震災で被災した125世帯が暮らし、一般入居も出てきている。
 災害公営住宅は、入居開始から一定期間が経過すると減免措置がなくなり、世帯全員の所得総額が基準を超えると、家賃が上昇する。これまで飯島さんは、退去する30~50代の世帯から、中古住宅を購入したり、別の住まいに移る話を耳にしてきた。
 市内でも、各地で人口減少が進む。出生数が死亡数を下回る自然減に加え、高校卒業後の市外進学・就職によって転出者が転入者を上回る社会減が大きな要因だ。さらに、災害公営住宅団地では、家賃負担増の要因も抱える。
 飯島さんは、管理する県職員らから、災害公営住宅は他の公営住宅と同様に、最終的には近隣のアパートとの均衡を図る観点で、収入に応じて家賃が決まっていく制度への説明は受けてきた。
 しかし、住宅購入でローンを組める若い世代が抜け、団地全体の高齢化が進むと、自治活動を担う住民が減る。市からは自主防災組織の結成や国勢調査の調査員を出すよう依頼の文書が来るが、その人材確保に頭を悩ませる。
 飯島さんのような自治組織の中核を担う役員だけでなく、団地に暮らす住民全体が、高齢化進行や、自治を担う人材不足を認識している。身の回りの相談に乗る高齢者たちには「出て行かないでね」「ずっといるよね」と声をかけられる。
 10年間を見据える総合計画。その将来像の前に、市民が暮らす10年先の団地コミュニティーを見据える時、不安が先行する。

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 市側は説明で、将来を考えるうえでの大きなテーマの一つとして「震災からの復興の〝総仕上げ〟と、整備後のモノ・コトの〝活用〟」を挙げた。被災してからの9年半、がれきが撤去され、地ならしされた場所には、大規模事業によって、震災前にはないさまざまな建物が各地に整備された。完成のたびに「復興」と称されてきた。
 震災から10年目を迎え、その復興が揺らぎ始めている。まだ築年数が浅い住宅に暮らす人々も、将来に不安を抱える。新型コロナウイルスによる経済的な打撃も加わり、新たに完成した商店街も、苦境に立たされている。
 災害公営住宅団地や高台移転の住宅地を含め、持続可能なまちづくりとは何か。飯島さんは、単なる財政的な補助ではなく、住民の自主的な活動や地域活動を担う人材を引き出す仕組みづくり、知恵の重要性を感じる。
 「単に収入で家賃を決めるのではなく、自治活動への貢献も反映できないか。若い世代の入居を広く促し、役員などを務めれば家賃を下げるといった仕組みはどうか。時間をかけてコミュニティーをつくり上げることができるし、自治が少しでも成り立つのではないか。とにかく、今のままでは阪神淡路大震災の時から言われていた課題が解決されないままになる」