地域の農業を考える 現場の課題などを共有 人・農地プラン
令和2年9月3日付 1面
県、一般社団法人県農業会議などによる地域農業マスタープラン(人・農地プラン)の実質化・実践に向けた研修会は1日、住田町役場町民ホールで開かれた。全国的に少子高齢化が進む中、地域の農業を担っていく世代が効率的な農地利用やスマート農業を行うための農地集積・集約化を進めていくことが急がれている。研修会では気仙2市1町の農業委員らが一堂に会して現場の声、課題を共有しながら、地域の農業について考える機会とした。
〝実質化〟へ向け研修会
同プランは、地域の高齢化や農業の担い手不足が懸念される中、5年後、10年後に、誰がどのように農地を使って農業を進めていくのかを地域の話し合いにもとづいてとりまとめたもので、農地の集積計画や利用図を作成して地域における将来的な農地利用の「設計図」となる。
農林水産省によると、平成30年度末現在、47都道府県でプランの作成に至っている地域は1万5000余、本県は33市町村で447地域となっている。
一方、この中には、地域の話し合いにもとづくものとは言い難いものもあったことから、同省ではアンケート調査や話し合いの結果を地図に反映させて現況把握を行ったうえで将来方針を作成することにより、人・農地プランの「実質化」を図るよう呼びかけている。
実質化された「人・農地プラン」とは▽対象地区内の耕地面積の、少なくとも過半について、農業者(耕作者または地権者)の年齢と後継者の有無等をアンケートで確認▽アンケート結果を地図化し、5年から10年後に後継者がいない農地の面積を「見える化」して話し合いの場で活用▽これらをもとに、農業者や自治体、農業委員会、JA、土地改良区等の関係者が徹底した話し合いを行い、農地利用を担う経営体のあり方を集落ごとに決めていく──というプロセスを経て作成されたものを指す。
市町村は、プランが「実質化していない」と判断した区域については、農業者へのアンケートやその結果を踏まえた地図の作成、統計情報の整理、地区ごとの話し合い、話し合い結果の取りまとめを経てプランを公表する。
研修会は、実質化等の取り組みを着実に推進するために、策定主体である市町村や農業委員会関係機関、団体の担当者を対象に、地域の話し合いに必要な「準備」から「運営」までのノウハウを学んで円滑な話し合いの支援に役立てようと県内各地で開催しているもので、住田町での開催は県内11カ所目となった。
この日は、気仙2市1町の職員や農業委員、農地利用最適化推進委員、県農林水産部農業振興課、県大船渡農林振興センター、県大船渡農業改良普及センターなどから合わせて約40人が出席。
県農業会議の三浦正弘農地・経営部長による講演のあとパネルディスカッションが行われ、大船渡市農林課の松川直史係長、陸前高田市農林課の及川麻美主任技師、住田町農政課の吉田康平主事が登壇して実質化の取り組み状況と課題などについて説明した。
大船渡市と住田町はこれまでに作成したプランについて「実質化していない」との判断から、陸前高田市では今後のプラン作成に向けてアンケート調査や話し合いに取り組んできており、いずれも年度内のプラン作成・公表を目指している。
3人はそれぞれ、「耕作者年齢」「後継者の有無」「5年後の農地利用」などについて調査したアンケート結果などを紹介し、話し合いの状況について説明した。
話し合いの中で地域から出された意見も紹介され、「高齢化や後継者不足による労働力、担い手不足」「土地条件が悪く集積・集約ができない」「貸したい土地は山ほどあるが借り手がいない」といった共通した課題も挙げられた。
出席者からもさまざまな意見が寄せられ、関係者はこうした声を受け、今後どのように地域農業を展開していくかを考えるヒントとしていた。
県大船渡農林振興センター農業振興課の鷹羽誠課長は「プランの実践に向けては農業委員の方々の協力も必要となる。各地区でそれぞれ課題はあると思うが、その解決に向けてプランを活用しながら進めてほしい」と話していた。