新型コロナウイルス/図書館IC化事業着手へ 情報一括処理で感染防止

▲ よりスムーズな貸し出し・返却業務を目指す大船渡市立図書館

 大船渡市は、新型コロナウイルス感染防止策として、市立図書館での「IC化事業」を計画している。4日に開会した市議会9月定例会に、事業費を盛り込んだ一般会計補正予算案を上程。所蔵全図書にICタグを設置し、複数図書の情報を一括処理にできる機能を生かし「セルフ貸出・返却機」の導入などを進める。本年度中の整備を目指しており、感染防止だけでなく、業務効率化や各種サービスの充実にもつなげたい考えだ。

 

「セルフ貸出・返却」導入など

補正予算案に計上

 

 現在の市立図書館は、市民文化会館と一体的に整備され、平成20年11月に開館。令和元年度末時点での図書、視聴覚資料等、雑誌の蔵書数は15万9900点に及ぶ。
 元年度における館内貸出者数は2万362個人、240団体。貸出冊数は個人、団体合わせて9万8521冊だった。
 新型ウイルス感染防止のため、今年3月に25日間休館したため、貸出冊数は前年度比約7%減となったが、利用登録者数は1万5481人で同423人増加するなど、住民生活に定着している。
 これまで同館の蔵書管理は、各図書に貼り付けているバーコードで管理。今回導入するICタグには、ICチップなどが埋め込まれ、全図書に設置する。
 現行のバーコードは、書籍1冊ごとに読み取るための作業が必要。ICタグでは、複数の図書情報を一括して取り込むことができる。県内の図書館で導入が進むほか、同様のシステムは大手衣料量販店でも精算時の時間短縮による「レジ待ち行列」の解消などに生かされている。
 何冊も図書をまとめた状態で機器の前に置くだけで、貸し出しや返却手続きが可能となる。これを生かし、図書館では通常の受付カウンターに加え、新たに「セルフコーナー」を設ける方針。混雑緩和、接触機会の削減を図り、利用者が安心して利用できる環境づくりにつなげる。
 事業ではこのほか、サーバー関連機器や図書館職員が使用する貸し出し・返却機器に加え、受付未処理の図書などを検知する「ICゲート」の設置、書架に置いたままで図書などの棚卸しが可能となる蔵書点検用機器の導入を計画。事業費は3181万円で、予算議決後に導入を進め、年度内の完了を目指す。
 感染防止だけでなく、蔵書管理の効率化や適正化、蔵書点検の日程短縮による開館日の増加、利用者の待ち時間短縮といった効果も期待できる。「自分がどんな本を借りたか、周囲の人に知られたくない」といった利用者要望もある中、よりプライバシーに配慮した運営につながる利点もある。
 金野優子館長は「職員の貸し出し手続きの負担が軽減することで、レファレンス(資料や調査相談)業務など他業務の充実につながる。サービス向上や、盗難防止も期待できる」としている。