やっとここまで戻った 高田町長砂地区住民が自治会館再建へ 大津波で壊滅的被害受ける (別写真あり)

▲ 長砂地区の自治会館再建を手掛ける福田さん㊧と、同地区の及川さん

 東日本大震災はあす11日、発生から9年6カ月を迎える。大津波で全域が壊滅的な被害を受けた陸前高田市高田町の長砂(ながすか)地区の住民は今月、被災した自治会館(公民館)の再建を果たす。津波で118戸から4戸にまで減った世帯数は、この9年半で16戸にまで増えた。地区の規模は震災前の7分の1程度となったが、一度は解散を余儀なくされた町内会としての機能を発災10年目にして取り戻し、再び集う場ができることを住民たちは喜んでいる。

 

あす震災9年半

 

 地区の新たな拠点となる自治会館「長砂会館」建設の中心を担うのは、同地区住民で大工の福田利昭さん(77)。22坪と小さめながら、柱にヒノキ、梁にはマツ、構造はスギと、すべて気仙の材を使った会館は、気仙大工の技術を誇る福田さんだからこそ手掛けられた立派な建物だ。
 現在の高田松原防潮堤背後の低地部に位置していた長砂地区は、大震災津波で118戸のうち114戸の家屋が全壊。地区公民館にあたる14区会館も失われた。比較的高台にあった4戸を除くと、ほぼ全滅ともいえる甚大な被害を受け、犠牲となった住民も多く、町内会は一度「解散」を余儀なくされた。
 福田さんの自宅は残り、一時は親類ら50人以上が避難生活を送っていたこともあって、地区民の〝寄合所〟の役割も果たしていた。しかし、住宅再建のために地区外、市外へと流出してしまった人も多く、福田さんは「もっと早く(土地の造成が)進んでいればみんな残れたのに」とくやしさをにじませる。
 それでも同地区は、8月7日に行われる七夕行事の伝統もつないできた。周辺に再建を果たした人たちの家について「あれもこれも、俺が建てたんだ」と誇らしげに語る福田さん。現在は震災直後の4倍となる16世帯が地区内に暮らす。町内会も5年ほど前に復活させることができた。
 同地区は今春、復興交付金を活用した市の自治会館等整備事業費補助金を使い、会館を再建しようと決めた。「何十軒、百何軒とある地区と違い、寄付は負担が大きいから」とし、補助金として受け取れる1000万円以内で建てるため、福田さん自ら毎日腕をふるう。 
 日曜日には、地区の若い世代も手伝いに来てくれる。「みんな、集まる場所ができると喜んでくれている」と福田さんもやりがいを感じている。
 同地区の及川征喜さん(76)は「すべて破壊しつくされたといってもいい地区に、震災から9年半たってまたこういう場所ができるとは。福田さんが音頭を取り、引っ張ってきてくれたおかげ」と感慨深げに語る。
 会館は今月中に完成する予定。福田さんは「みんなで集まってお祝いしなきゃな」と、及川さんは「地区の人だけでなく、外へ出てしまった人たちにも遠慮なく来てもらいたいな」と語り、今からその日を楽しみにしている。