気仙も一部地域浸水域に データ分析し対策検討へ 内閣府が本県分想定域公表

▲ 「浸水なし」と示された震災津波伝承館などがある高田松原津波復興祈念公園

 内閣府は、日本海溝・千島海溝沿いで発生が懸念されるマグニチュード(M)9クラスの巨大地震に関し、本県沿岸の津波浸水想定域を公表した。最大津波高は大船渡16・2㍍、陸前高田12・5㍍。国が設定した代表地点の津波到達時刻と最大波は、大船渡が地震発生から2時間21分後に4・8㍍、陸前高田が6時間40分後に9・7㍍で、東日本大震災後整備した防潮堤を越えて浸水する地域が一部あるが、久慈市や宮古市などと異なり、気仙両市ともに市役所は浸水を免れる想定。両市の自治体は、県などと連携しながら示されたデータの精査、分析を進め、災害から命を守る対策を練るための基礎データとする。

 

日本・千島海溝M9級巨大地震、津波推計
両市庁舎までは至らず

 

 浸水想定域は東日本大震災同様、最悪の事態を想定。潮位は満潮位で、防潮堤は津波の方が高い場合、破壊されるとの前提で、沿岸12市町村ごとに公表された。これとは別に、防潮堤など海岸保全施設が機能した場合の想定域も参考資料として示された。
 このうち、陸前高田市の最大津波高は、米崎町内の12・5㍍。高田松原津波復興祈念公園内の震災津波伝承館などは防潮堤を越えないため、「浸水なし」と示された。
 代表地点(気仙川河口・長部漁港周辺)の津波到達時刻と津波高は、地震発生から20分後に30㌢、26分後に1㍍、37分後に4・6㍍(第1波)、6時間40分後に9・7㍍(最大波)。
 一方、大船渡市の最大津波高は、三陸町綾里の16・2㍍。代表地点(大船渡湾奥周辺)の津波到達時刻と津波高は、地震発生から17分後に30㌢、24分後に1㍍、36分後に3・5㍍(第1波)、2時間21分後に4・8㍍(最大波)となっている。
 このほか、県内では久慈、宮古、釜石の3市役所と洋野町、野田村の両役場が浸水する。野田村役場では、地震発生から43分で8・2㍍の高さにまで達するとした。
 東北から北海道の太平洋沖にある日本海溝と千島海溝沿いでは、過去に繰り返し巨大地震が発生している。
 内閣府の有識者会議は平成27年、津波高や浸水範囲の予測見直しに着手し、海溝沿いの過去約6000年間の津波堆積物を調査。前回(17世紀)の発生からの経過時間を踏まえ、「最大クラスの津波発生が切迫している状況」と判断した。
 対象は、北海道、青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉の太平洋に面した7道県。巨大地震は日本海溝(三陸・日高沖)、千島海溝(十勝・根室沖)を震源地に想定し、地震の規模を示すマグニチュードは日本海溝が最大9・1、千島海溝が最大9・3と推定している。
 気仙両市の想定震度は6強。浸水図に関しては、6道県分が4月に示されたが、岩手県分は「震災復興に影響しかねない」という県の要請を受け、公表が見送られていた。
 浸水域の公表に関し、陸前高田市防災課の中村吉雄課長兼防災対策監は「できるだけ早期に示すべきと考えていた。公表により、市民も想定域を把握できるようになったのは一歩前進」と受け止める。
 津波復興祈念公園やかさ上げした市街地には「浸水しない」という想定が示された一方、12・5㍍未満の防潮堤が整備された広田半島の一部地域などでは浸水する。
 中村課長は「決して油断はできない。万が一を考え、この想定に甘んじることなく緊張感を持つべき。今回はあくまで基礎データ。今後さらなる詳細のデータが国、県から示される見通しで、特に防潮堤を越えると考えられる地域への影響などを検証していく。最大で震度6強を観測する地震の揺れに対する備えも啓発していかなければいけない」とし、県などと協議しながら住民向け説明会なども検討していく。
 大船渡市防災管理室の及川吉郎次長は「現段階では詳細な情報が読み取りにくい部分はあるが、すでに定めている災害危険区域とほぼ同じ範囲内での浸水想定ではないかと認識している」と話した。
 また、及川次長は今後の対応として「代表的な場所の津波浸水高や到達時間は、広報などで市民にお知らせしたい。県で再度シミュレーションを行うと聞いており、その結果が災害危険区域と大きく異なるような状況となれば、ハザードマップ再作成に向けて住民から意見を聞くなどの対応も考えられる」と見通しを示した。