気仙の住宅地は前年度に続いて下落 人口減少などで需要低迷/令和2年度地価

 県は、令和2年度地価調査結果の概要を公表した。気仙地域は、東日本大震災で被災した住居の再建や災害公営住宅への入居が進んだことに伴う移転需要の落ち着きと、少子高齢化、人口減少の影響を受けて土地需要が低迷。3市町の住宅地価格は大船渡市が2万2700円、陸前高田市が1万4500円、住田町が8500円と、いずれも平均変動率はマイナスとなり、前年度に続く下落となった。

 

 地価調査は適正な地価形成のために行うもので、地価公示とともに、一般の土地取引などの指標となる。県が不動産鑑定士の鑑定評価に基づき、基準地の標準価格を判定している。価格時点は7月1日。
 県内の調査対象は、33市町村の基準地375地点(宅地・宅地見込地352地点、林地23地点)。気仙3市町は大船渡市が13地点(同12地点、同1地点)、陸前高田市が6地点(同5地点、同1地点)、住田町が6地点(同5地点、同1地点)の計25地点となっている。
 気仙3市町の用途別平均価格(宅地・宅地見込地1平方㍍、林地10㌃当たり)と平均変動率(▼はマイナス)をみると、大船渡市は住宅地2万2700円、平均変動率▼1・7%、商業地5万1300円、同▼1・2%、工業地1万5700円、同0・0%、林地は3万4600円、同0・0%だった。
 住宅地は前年度から0・6ポイント下降し、5年連続の下落。商業地は上昇から下降に転じ、工業地と林地は横ばいだった。
 陸前高田市は、住宅地1万4500円、同▼2・1%、林地は2万7800円、同▼0・7%。住宅地は前年と同じ下降幅で4年連続の下落。林地も下落したが、下降幅は1・1ポイント縮小した。
 住田町は住宅地8500円、同▼1・9%、商業地1万6600円、同▼2・9%、林地は3万6800円で、同▼2・1%。いずれも下落となった。
 県内住宅地、商業地の変動率上位に気仙の地点はなかった。
 県全体の動向をみると、住宅地263地点の平均価格は2万4900円。平均変動率は▼1・1%と、20年連続の下落となった。
 地価は、住宅ローン減税や低金利政策などによる住宅需要の下支えが継続される中で、大型店舗の充実、道路の整備などによって、交通利便性や住環境が良好な地域に加えて、医療機関の移転、工場の進出に伴って住宅需要が押し上げられている地域で上昇。
 一方、少子高齢化や人口減少などが進む地域では土地需要が低迷し、下落となった。
 県内で上昇したのは盛岡など9市町の54地点で、53地点が内陸部だった。沿岸部は宮古市の1地点のみで、気仙での上昇地点はなかった。
 商業地74地点の平均価格は4万4800円で、平均変動率は▼1・8%と27年連続の下落。価格が上昇したのは盛岡市、矢巾町の5地点で、気仙はなかった。中心市街地における商店街の空洞化などの影響によって土地需要が低迷し、地価が下落した。
 工業地13地点の平均価格は1万2000円で、平均変動率は0・5%となり、昨年度に続く2年連続の上昇。価格が上昇したのは盛岡、北上、奥州、矢巾4市町の4地点で、ほかはすべて横ばいだった。
 林地の平均価格は4万5600円で平均変動率は▼1・1%。国産材市況の長期低迷や林業就業者の後継者不足などにより、26年連続の下落となった。
 今回の調査結果で県は、新型コロナウイルス感染症拡大による地価への影響にも言及。
 この中では、「県内の不動産市場では需要者による買い控えも一部でみられるものの、全体的に地価に対する大きな影響は出ていないものと見ている」としたうえで、「終息時期が不透明で、店舗賃料の値下げ要請やホテルの収益悪化などが懸念される中、積極的な投資は見合わせる傾向が当面継続すると見込まれる」と分析している。
 気仙地区の地価(基準値)は別表の通り。