電気バスの有用性調査へ 来年度以降の導入目指す

▲ 11月に再び運行する電気バス(今年1月の試験運行の様子)

 陸前高田市は11月3日~16日、時速20㌔未満で徐行する低速電動バスを走らせ、有用性を探る実証事業を行う。環境への負荷が少ない電気バスの試験運行は昨年度に続き2度目。観光スポットを巡るルートに加え、今回は新たに災害公営住宅から商業施設や県立高田病院まで行き来するバスを走らせ、買い物や通院を想定した利便性も確かめる。来年度以降の導入を目指しており、地域と地域を結ぶ公共交通などを補完する位置づけで利活用を想定する。

 

11月3~16日に試験運行

買い物や通院も想定し2ルート

 

 実証事業は、国土交通省による「グリーンスローモビリティの活用検討に向けた実証調査支援事業」の選定を受けて実施する。
 電気バスは、低速走行により、高齢者や子どもでも安心して移動できる高い安全性や、周辺の風景、街並みをゆっくりと鑑賞できるのが特徴。排出ガスゼロに加え、屋根に設置している太陽光パネルで走行しながらバッテリーを充電できる仕様となっている。
 今回は10人乗りの1台を導入する。11月3日~16日の期間中、土日曜日・祝日は、道の駅高田松原─アバッセたかた間をおよそ30分間隔で走らせる計画。1日7往復程度を想定している。
 平日は「地域の足」としての利便を確かめようと、高田町の災害公営住宅の下和野団地、中田団地から県立高田病院やアバッセまでのルートを日替わりで運行する。
 乗車体験は無料で、利用者には利用目的や普段の交通手段、満足度などのアンケート調査を行う。運行ダイヤは10月中に固め、周知することとしている。
 市は、誰もが生き生きと暮らせる「ノーマライゼーションという言葉のいらないまちづくり」をまちづくり総合計画の基本理念に掲げる。国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の「誰一人取り残さない」という理念に合致する取り組みを推進しており、昨年7月、内閣府からSDGs未来都市に選定された。
 こうした経緯を背景に、環境負荷が少ない電気バスを活用した「グリーンスローモビリティ」の導入を模索。今年1月には、持続可能なまちづくりを学ぶフォーラムに合わせ、道の駅高田松原─アバッセたかた間などで4日間運行させ、市民ら約200人が試乗した。
 前回の試験運行で実施したアンケートでは、「景色を見ながら楽しめた」「乗った人同士で会話が弾んだ」などと好評を得た。高齢者などからは住居から医療機関、商業施設などへの移動手段として活用したいと求める声も聞かれた。
 市政策推進室政策広報係の菅野隼係長は「前回の運行でもニーズの高さを感じた。今回は災害公営住宅から日常活動の場へと移動するルートも走らせる。既存の交通手段も確保しながら、スローモビリティの有効性をより具体的に調査したい」と見据える。