避難用連絡橋に設計ミス 担当事業者が追加工事 県の六ケ浦漁港機能強化事業

▲ 連絡橋の再設置工事などが進められている六ケ浦漁港の漁港機能強化事業

 県が陸前高田市広田町の六ケ浦漁港で進めている漁港機能強化事業で、架設した津波避難用の連絡橋に設計ミスが見つかり、設計を担当した事業者が橋の撤去と再架設工事を自前で発注し、進めていることが3日までに分かった。県によると、追加工事などの費用は事業者側が負担し、来年3月までの工期に変更はないとしている。
 同事業は、東日本大震災で被災した六ケ浦漁港内に鉄筋コンクリート製の人工地盤(延長62㍍、幅17㍍、高さ9㍍)を設置し、防潮堤と結ぶ連絡橋(延長約25㍍、幅約6㍍)や、人工地盤の上部から漁港に下りるための橋(同32㍍、同約6㍍)とスロープ(同74・6㍍、同約6㍍)を設けるもの。総事業費は約12億円。
 人工地盤は通常、地盤の上部を駐車場に、下部は漁業者らの作業場として利用。連絡橋やスロープは津波注意報、警報などが発表されたときには避難路となり、漁港からスムーズに高台へ逃げられる仕組みとなっている。
 事業期間は平成26年度から本年度までで、設計は東京都のパシフィックコンサルタンツ㈱、施工は北上市と東京都の事業者が担当。26、27年度に設計を行い、28年3月から工事を進めてきた。
 県によると、人工地盤と防潮堤を結ぶ連絡橋は、昨年7月に架設。しかし、同月末に人工地盤に設置した橋の受け台部分からひび割れが見つかったという。経過観察を行い、パシフィックコンサルタンツが原因を調査したところ、構造計算にミスがあったことが分かった。
 その後、同社や県などで対応を協議し、同社の費用負担で連絡橋の解体と再度架設する工事の実施を決めた。同社は今年6月、施工を担う2事業者に解体と追加工事を発注し、連絡橋の解体は7月から8月にかけて行われた。
 新たな連絡橋は、当初計画されていた受け台を撤去し、橋脚1本を新設したうえで架設。現在は新たな橋脚のくい打ち工を終了した段階という。連絡橋の追加工事と並行し、スロープとを結ぶ橋の設置なども進める計画としている。
 県は昨年11月と今年6月の2回、地元の漁協、漁業者らに設計ミスや追加工事の内容などを説明。漁業者らからは、工事の安全対策などが求められたという。
 追加工事に伴う事業への遅れはなく、工期は予定通り本年度末までとなる。人工地盤や連絡橋などの供用開始は、来年4月を予定する。
 県大船渡水産振興センター漁港管理課は「追加工事は民間発注になるが、構造物は県が引き受けるもの。県発注のものと同様に、工事状況は立会して確認し、工程調整も進めていく」と話している。
 パシフィックコンサルタンツの広報室は東海新報社の取材に対し、「受託した案件については機密としているため、回答することはできない」としている。