移住定住策 オンラインで実結ぶ 高田暮舎の企画が奏功
令和2年10月10日付 7面

陸前高田市のNPO法人高田暮舎(くらししゃ)(岡本翔馬理事長)が、新型コロナウイルスを感染防止しつつ、同市への移住定住を促進するために企画したオンラインイベントが成果を上げている。この秋にはイベントをきっかけに3人が移り住み、うち1人は「自分のように地方移住に興味がある人と地域をつなげたい」と高田暮舎の仲間に加わった。高田暮舎は今月、新たな試みとして関西在住者・出身者限定のオンライン交流会を開催し、移住定住のさらなる推進に当たる。
3人が陸前高田で新生活
関西とつながる交流会も開催へ
市から移住定住総合支援業務の委託を受けている高田暮舎が、コロナ下での移住者獲得を目指し、まず企画したのは「人生横丁」。6、7月に2回開催し、居酒屋で移住経験者や市民らが酒を飲みながら語らう様子を動画でウェブ配信した。
高田暮舎によると、新型ウイルス流行を背景に全国的に田園回帰志向が高まる一方、移住後、思い描いていた田舎暮らしとのギャップを感じる人も少なくないという。そこで、移住者の暮らしぶりをありのまま伝えようと、何気ない飲み会の場面を切り取り、そのうえで移住者が就ける仕事や陸前高田の魅力をインタビュー形式で発信した。
遠野市出身で、昨年4月に神奈川県横浜市から陸前高田市に移住した高田暮舎移住コンシェルジュの松田道弘さん(34)は「移住定住はハードルが高く、単に『陸前高田に来てください』『こんな仕事で求人募集しています』と呼びかけても相手に響きにくい。陸前高田で移住者はこんな暮らし方をしているというのを誇張せずに伝えることでイメージが湧きやすいと考えた」と狙いを語る。
第二の矢として「高田暮らし交流会」を開催。移住者と地域住民が郷土料理を囲みながら親睦を深める様子を配信し、外部の人を温かく迎え入れている地域性を伝えた。
地域おこし協力隊を募るオンライン説明会、個別相談会も開き、結果、10月に2人、11月に1人が同隊員として着任することとなった。高田暮舎のほか、特産の米崎りんご生産拡大に取り組むNPO法人LAMPや市観光物産協会で働く。
このうち、高田暮舎で5日から働いているのは、千葉県野田市出身の髙橋瞳さん(24)。「地方移住に関心が向いたときに人生横丁の動画を見た。『こんな暮らしなら自分でも大丈夫そう』と思えたのが、いくつか候補地があった中で陸前高田を選んだ理由」と語る。
9月末に広田町内の空き家に引っ越し、「海まで歩いて行ける環境に住むのは初めて。きれいな景色に毎日癒やされている」と喜ぶ。松田さんとともに移住コンシェルジュを担い、「高田暮舎に移住のきっかけを作ってもらった。移住者だからこそ感じる陸前高田の良さを伝えられるよう頑張りたい」と決意する。
高田暮舎は昨年、関東圏からの移住促進を目的に、東京都内で交流会を計3回開催。今月15日、20日には関西在住・出身者のみをターゲットにオンライン交流会を初めて開く。参加者には市民に親しまれているホルモン料理や地酒、特産の「北限のゆず」を使った酎ハイなどを無料で郵送し、食事しながら懇談する。
松田さんは「まずは参加者に楽しんでもらいたい。東日本大震災後、関西からも支援を受けてきた。そうした感謝の気持ちも込め、関西の人とつながりが生まれるような機会ともなればいい」と意気込む。