海上七夕船「大船渡丸」 改修事業が本格化 日本財団や市が助成

▲ 改修事業が本格化した「大船渡丸」

 大船渡市大船渡町の茶屋前埠頭(ふとう)で、大船渡商工会議所(米谷春夫会頭)が所有する海上七夕船「大船渡丸」の改修事業が本格化している。三陸・大船渡夏まつりでは、光の演出で彩る中心的な役割を担ってきたほか、9年7カ月前の東日本大震災時は、いったん流された後に戻ってきた〝奇跡の船〟としても知られる。改修ではステージ屋根を常設化し、まつりだけでなく港湾を生かした各種イベントでの積極活用を見据える。年内の作業完了を見込む。

 

大津波耐えた〝奇跡の船〟
屋根常設化で積極活用へ

 

 「大船渡丸」は全長38㍍、幅10・5㍍、高さ26・4㍍。青森県内にあった砂利運搬船を市からの補助2000万円を得て購入し、七夕船として改造した。平成19年の三陸・大船渡夏まつりで、イルミネーションによる装飾が初披露された。
 以降、まつりでは、最大の見せ場である湾内巡航など、海を華やかに彩る〝顔〟として活躍。岸壁接岸時はステージにもなり、運営には欠かせない存在となっている。
 平成23年3月11日の震災発生時、赤崎町の永浜貯木場に係留されていた。大津波の引き波で、地震発生から2時間30分余りが経過した午後5時30分ごろ、湾口防波堤よりも外洋側に出た。
 長崎漁港方面に漂流し、その光景を目にした関係者は〝流失〟を覚悟。しかし、一夜明けた12日、同町蛸ノ浦地内の市道蛸ノ浦合足線沿いに続く防潮堤に乗り上げていた。11日夜にも押し寄せた津波によって、再び湾内に戻ってきたとみられる。
 同年7月に海上に戻され、同年のまつりは中止となったが、イルミネーションを実施。翌年以降のまつりでは、震災前と同様に湾内巡航や歌謡ステージに活用されてきた。
 毎年、まつりに向けた準備作業ではステージから高さ約5㍍の部分に屋根をかけるが、ボランティアの負担が大きく、年々参加者の高齢化が進む中で安全確保が課題に。電源・電灯の常設化も求められていた。
 こうした状況を受け、同船の電飾などを担ってきた大船渡・海を愛する会(齊藤俊明会長)が要望活動を展開し、本年度、日本財団や市からの助成が決まった。
 当初は今年の夏まつり前の完了を計画していたが、新型コロナウイルスの影響で中止に。改修工事着手も延びていたが、先月下旬から本格化し、埠頭内で接岸している船上には、作業用の足場も組まれた。
 工事では、鉄骨による柱を組んだ上にパイプトラス方式でアーチ状の屋根を架け、電気設備工事も計画。事業費は約4000万円で、年内の作業完了を見込む。
 屋根の常設化で、イベント活用時の準備負担が軽減。船底部分への浸水防止など、機材維持や船全体の長寿命化にもつながる。
 今後は来年開催予定の夏まつりはもちろん、客船入港歓迎行事、港湾を核としたにぎわいを図る「みなとオアシスおおふなと」関連のイベントでの利活用など、活用機会が増える見通し。子どもたちをはじめ、幅広い世代が海や港湾に親しみを深める機会創出も期待されている。