ネイルデザインで全国1位 エスピオ(大船渡)の志田さん (別写真あり)
令和2年10月17日付 7面

大船渡市盛町で「ネイル&ビューティーサロンS─PIO(エスピオ)」を営む志田真梨子さん=陸前高田市広田町=は、ストリートポップアートアーティスト・乾シンイチロウさんが経営する会社主催のデザインのフォトコンテストにネイルチップを応募し、全国1位に輝いた。憧れの乾さんから「力強く、シンプルで上品」と評価され、喜びを糧に「小さなまちでも夢を持てるよう、技術を提供し続けたい」と意欲を新たにする。
「力強く上品」と評価
自宅被災も店再開を優先
コンテストは乾さんが手掛けるブランド「guernika(ゲルニカ)」の新しいアートステッカー発売を記念し、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のインスタグラムを使い写真を投稿する形式で行われた。
200種類近い新ステッカーを自由に使ってデザインするもので、8月下旬から9月末までの約1カ月で、全国からネイルチップやピアスなどの小物の写真約100点のエントリーがあったという。
志田さんのデザインは黒や白の原色をベースに細かく作り込んだのが特徴。今月5日にインスタグラムで結果が発表され、乾さんから「強い色を使っているのにすごくいいバランスだ。ゲルニカのテイストを力強くシンプルに引き出し、上品さも持ち合わせている」とのコメントが添えられていた。
志田さんは「乾さんに見てほしい一心で、男性でも女性でもかっこいいと思ってもらえるデザインを意識して作った。賞をもらえるとは思っていなかった」と感激した。
陸前高田市広田町出身。高田高を卒業後、東京都の美容専門学校に進学し、「当時はネイルが一番下手だったので猛練習した」と語る。都内と盛岡市でエステサロン勤務を経て平成13年、24歳の時に「地元で役に立ちたい」とそれまで化粧品店・エステサロンを営んでいた母・春代さんと共にネイルとエステを手掛ける現在の店を構えた。
東日本大震災では、店舗が全壊、自宅も大規模半壊の被害を受けた。それでも「仮設住宅に暮らす人が少しでも明るくなれるように」と自身も仮設で生活しながら、店舗のリフォームを優先して急ぎ、発災から5カ月で営業を再開。自宅は震災の約1年後に改築した。
大船渡市内の自宅が全壊し、仮設から通っていた時期もある50代女性は「(再開当時は)がれきだらけで真っ暗だったまちに、店の看板が光り始めたのを覚えている。色のないまちで、爪をきれいにしてもらうことで癒やされた」と振り返る。
1級ネイリストや国際認定エステティシャンなど数々の資格を持つ志田さん。もともとは今回応募したようなポップなアートが得意だが、普段の来店者には希望が多いシンプルで上品なデザインのネイルを意識している。
志田さんは「毎月楽しみにしてくれているお客さまもいる。『田舎だからできない』と諦めず、女性が夢を持って輝けるよう、技術を発信し続ける」と誇りを胸に腕を振るう。