小友浦干拓跡地の土砂投入事業 環境に配慮し工事続行 市側が回答し影響対策示す

▲ 残土の搬入が再開した小友浦干拓跡地

 陸前高田市が東日本大震災で被災した小友町の小友浦干拓跡地で進める復興工事での残土投入を巡り、現地で底生生物の調査を続けてきた専門家組織が生態系に大きな損失を与えかねないとして、投入の一時中止、残土処理法の再考を求め提出した要望書に対し、市は21日、環境に配慮した対策などを示し、「有識者の意見を聞きながら、工事を進める」と回答したことを明らかにした。市は残土投入により、かつて地域に親しまれた干潟の再生促進につなげたい考え。中断していた工事を19日に再開しており、予定通り来年3月下旬の完了を見込む。

 

生物専門家が中止を要望

 

 市議会復興対策特別委員会が21日、小友浦での残土投入工事に関し、市当局担当者出席のうえ調査を行った。当局は干潟形成につながりうる工事の目的やこれまでの経過、今後の予定を説明した。
 残土投入の一時中止を求める要望書は、底生生物の研究者らでつくる日本ベントス学会自然環境保全委員会(委員長・佐藤慎一静岡大教授)が提出したもの。
 学会員らは震災翌年の平成24年から、小友浦での生態系調査を実施。その結果、底生生物は年々増加していることが分かり、30年までに161種を確認。アサリやマガキなどが豊富で、希少な二枚貝なども見つかった。
 工事は生態系に大きな損失となる可能性があるとして、▽残土投入を一時中止し、残土処理方法を再考する▽干潟再生事業の干潟像を明確にする▽干潟再生事業のロードマップ(工程表)を明確にする──の3点を要望。今月1日、戸羽太市長や担当課宛てに要望書を郵送し、5日に市役所に届いた。
 市は、工事に関する水質・海生物環境などの指導を受けてきた有識者から意見を聞くため、7日から工事を中断。庁内でも検討したうえ、15日付で佐藤委員長に回答を書面で送り、19日に工事を再開した。
 回答書では、残土投入における環境影響対策など11項目を示し、干潟完成図も添えた。来年度以降、干潟を有する浜として安定するか経過観察していく。
 昭和30年代まで小友浦に形成されていた干潟は、アサリを含む底生生物が豊富で、潮干狩りを楽しめる交流の場などとして地域に親しまれていた。高度経済成長期の食糧増産のため、昭和43年に県営事業として干拓された。
 震災の津波で防潮堤が損壊し、干拓地に浸水したため、一部で干潟のような光景が広がった。
 新たな防潮堤は、県が旧防潮堤より陸側200㍍の場所にT・P12・5㍍の高さで整備した。市は地域の意向を踏まえ、新旧防潮堤の間の場所を干潟として再生するプロジェクトを小友地区復興まちづくり将来計画、市震災復興計画に盛り込んだ。
 残土の投入は、6~7月に地元住民や漁業者向けの事業説明会を開催したうえ、8月に着工した。干拓跡地内の5・4㌶に5万4000立方㍍を運び入れる計画。均一の高さで整地せず、最大約3㍍の高さで盛り土し、表層には砂をかぶせて入り江状に仕上げる。土砂が沖へ流出しないよう海側に石積みの砂止め潜堤を整備する。
 市水産課の菅野泰浩課長は「引き続き環境に配慮しながら工事を進め、多様な生物が生存するような場所としていきたい」と話している。