連帯保証人と相続人提訴へ 町が10億円超の支払い求め 三木・ランバーの破産問題で

▲ 全会一致で訴訟提起の議案を可決した臨時会

 住田町議会は21日、臨時会を開き、破産手続き開始決定に至った三陸木材高次加工協同組合(三木)と協同組合さんりくランバー(ランバー)への農林業振興基金からの貸付金について、町が両事業体の連帯保証人とその相続人に対し、貸付金残金と利息、違約金など合わせて約10億5000万円の支払いを求める訴えを提起する議案を全会一致で可決した。訴訟の相手は連帯保証人・相続人合わせて19人で、22日までに盛岡地裁一関支部に訴状を提出する。

 

貸付金残金や違約金など

 

 神田謙一町長が議案について説明。質疑、反対・賛成討論は行われず、全議員が起立して可決された。
 請求の内訳は、農林業振興基金貸付金の残金7億6800万円と、これの利息約600万円、違約金約2億7700万円、さらに訴訟費用を加えた計約10億5000万円。町は顧問弁護士を訴訟代理人とし、第1審判決の結果、必要がある場合には上訴する方針だ。連帯保証人と相続人の住所氏名については公表していない。
 両事業体は、平成19年に経営危機が判明。町から両事業体合わせて約7億9000万円の公金融資を受けて再建を進め、26年度から年度当たり約3100万円を町に償還する計画だった。しかし、定められた額の償還ができない状況が続き、27年度の償還金は222万円。28年度は450万円にとどまった。
 このため、町は29年、両事業体や連帯保証人に立木未収金を含めた計10億円超の支払いを求める調停を大船渡簡易裁判所に申し立てたが、支払い提示額との開きがあり不調に終わった。
 その後、両事業体は事業継続を断念し、今年7月31日付で盛岡地方裁判所一関支部に破産を申請。8月14日付で同支部から破産手続き開始決定を受けた。
 令和元年度までの償還額は、三木が計1272万円、ランバーが計900万円で、貸付金のほとんどが未回収となっている状態。町議会9月定例会の一般質問では、多くの議員から両事業体への債権回収についての質問があったが、当局は、今後、破産管財人による債権整理の中で配当を受けたとしても、町が有する総額10億円を超える債権の全額回収は「非常に厳しい」との見方を示していた。
 臨時会後、神田町長は「回収できないからといって泣き寝入りするわけにはいかず、けじめを付けなければいけない」と、訴訟に踏み切った理由を語った。
 町では、遅くとも22日中には同支部に訴状を提出する。一般的な流れでは、訴状提出後に裁判所から第1回口頭弁論期日を決めるための連絡がある。
 町は、11月中に町内5地区で住民説明会を開催し、平成29年の調停申し立てから今回の訴訟に至るまでの経緯などについて説明することとしている。