大船渡拠点にサイバー防衛 テレワークセンター生かし 富士ソフトが実証事業

▲ 大船渡テレワークセンターを拠点とし、申請があった県内各企業に専用機器の取り付けなどを進めている富士ソフト

 大船渡市盛町に構える大船渡テレワークセンターの開設・運営などに携わってきた富士ソフト㈱(本社・神奈川県横浜市、坂下智保代表取締役社長)は、県内の中小企業を対象としたセキュリティー対策の実態把握や、サイバー攻撃からの防衛に向けた「見える化」の実証事業を始めた。同センターを拠点に、セキュリティー実態把握を進める取り組みで、すでに県内から30事業者が参加。来月まで参加を受け付けている。

 

すでに30事業所が参加

 

 システム開発などを展開する同社は東日本大震災以降、復興支援に取り組み、地方創生事業の一環でもある総務省の「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」に参画。市や他事業者と協業し、平成27年に盛町内に大船渡テレワークセンターを開設した。
 本年度は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公募した「中小企業サイバーセキュリティ対策支援体制構築事業(サイバーセキュリティお助け事業)」に採択された。これを受け、サイバー攻撃の「見える化」や、セキュリティー監視システムを活用した地域密着型の支援に乗り出した。
 地元密着度の高い検証を実現するため、大船渡テレワークセンターを中心とし、周辺の自治体や経済団体、地元IT企業との連携に基づく実証検証を進めている。県内の事業所を対象に参加を呼びかけ、現段階で県内の30社が申請。今月から機器の設置・発送などが始まった。
 地域連携に加え、同社が持つサイバーセキリュティーのノウハウを生かし、新型・未知のサイバー脅威に対するAIを使ったネットワーク監視などを展開。事務所内だけでなく在宅勤務のパソコンにも対応できる。
 中小企業のセキュリティー実態把握に加え、個人用ネットワークセンサーを生かし、テレワークや在宅勤務環境のサーバー攻撃の実態把握も進める。
 年内を検証期間とし、来年1月をめどに診断結果を示す計画。内容に応じて、改善策の提案なども行う。
 また、サイバー攻撃で緊急を要する場合は電話で知らせ、テレワークセンターから職員が直接出向く「駆けつけ」も想定。監視自体は、ネットワークをつないだ富士ソフトの本社で行っている。
 近年、パソコンのサーバーやネットワークに不正に侵入し、情報を盗んだり、システムを妨害するサイバー攻撃が増加。一方で、防衛策への関心が高まっていないとされる。
 同社システム事業本部大船渡テレワーク室の吉川竜平室長は「サイバー攻撃に対して、あまりピンと来ていない事業所が多いのでは」と話す。今回の実証事業では、セキュリティーを高める動きが広がるなど、県内でのサイバー防衛実践への啓発も見据える。
 吉川室長は「攻撃を受けてからでは遅い。製造から販売までのサプライチェーンが構築されている中、1カ所でも弱いところがあって、そこが攻撃を受けると、関連企業にまで影響が及ぶ。気がついた時には、データがすべてなくなっていることもあり得る。小さい事業所も、対策を講じる必要がある」とも語り、力を込める。
 事業参加は無料で、設置したセンサーの電気料金やインターネット通信料金は参加企業で負担する。参加方法などに関する問い合わせは実証事業本部(℡050・3000・2198)へ。