第2次観光ビジョン策定へ 〝アフターコロナ〟も見据え 委員会が始動
令和2年10月24日付 1面

第2次大船渡市観光ビジョンに向けた議論や意見集約を行う第1回策定委員会は23日、市役所で開かれた。本年度までを期間とする第1次ビジョン下での取り組み成果や、新型コロナウイルスが及ぼす影響などを踏まえ、来年度から5年間を期間とする新ビジョンをまとめる方針。新型ウイルスの影響で、今年の観光客入込数が半減している現状も示された中、委員らは〝アフターコロナ〟を見据えた振興策などについて意見を交わした。
今年の入込数は49%減に
策定委員会は観光関連の団体や行政関係者ら10人で構成。この日は代理を含めて9人が出席し、戸田公明市長から代表者への委嘱状交付が行われた。
あいさつで戸田市長は「宿泊や観光は交流人口拡大の切り札となるものであり、さらなる推進のために新たなビジョンを策定する」と述べ、活発な議論に期待を込めた。
役員選任では、委員長に大船渡市観光物産協会常務理事の鈴木弘氏、副委員長に大船渡商工会議所事務局長の齊藤光夫氏がそれぞれ就任。鈴木委員長は「コンサルタントに委託することなく〝手作り〟で進める。実行性あるものにしていきたい」とあいさつした。
協議では、事務局が第2次ビジョンの策定方針や観光客数推移について説明。第1次ビジョンの進ちょく状況や課題、第2次ビジョンの基本方針やキーワードも確認した。
第1次観光ビジョンは平成26年に策定。観光誘客に向けたさまざまな施策の具現化に向け、官民挙げて取り組みを進めた。期間は本年度までとなっている。
ビジョン策定後、復興需要の収束によって観光客入込数は減少していたが、昨年度は再び増加に。今年に入り、新型コロナウイルスの影響で厳しい情勢が続いている。
委員会で示された資料によると、今年1~9月の観光客入込数(暫定値)は32万881人。前年同期と比較して30万7213人(48・9%)の減少となっている。とくに今年4月が前年同期比で64%減少、5月は83%減少と落ち込み幅が大きかった。
今年1~9月の宿泊客数(暫定値)は3万5053人で、前年同期比では2万3891人(40・5%)の減少。観光客入込数と同様に4、5月は50%超の落ち込みとなったものの、9月は市や県などによる支援事業などを受け、前年実績比で約7割にまで戻った。
新たな観光ビジョンは、第1次ビジョン下での取り組みで浮かび上がった課題や新型ウイルス対応、国や県の動向などを踏まえたものとする。期間は来年度を初年度とし、令和7年度までの5年間。当初は本年度中の策定を目指していたが、新型ウイルスなどによる社会情勢変化に対応した内容とし、来年度中も協議を重ねる。
素案段階の基本方針では▽食の魅力の創造と発信▽滞在型観光の推進▽広域観光・インバウンドの推進▽観光宣伝の充実──を掲げる。このうち、滞在型観光では「稼げる観光」として、収益向上やいつでも利用しやすい体験メニューなどの確立を見据える。
さらに、木造の千石船復元船「気仙丸」の陸上展示やトレイルコース、防災学習ネットワーク構想など、近年注目が高まる観光資源の活用にも注目。海外観光客やILC(国際リニアコライダー)の整備実現を意識した取り組み、新型コロナウイルス感染防止策との両立にも力を入れる。
出席者からは「大船渡はサンマ以外にも海の幸がたくさんある。そういったものを生かす方策も大事では」「大船渡港にできた公園の活用を」「新型ウイルスの影響で大きく減ったイベントや団体旅行は、なかなか戻ってこないのでは。個人客の満足度をどうやって上げていくかが大切だ」などの意見が出た。
策定委員会は今後、2カ月に1回程度のペースで開催。この間に観光物産協会や商工会議所、市観光推進室によるワーキンググループや、市当局内でも検討を重ねる。来年夏に市議会説明や意見募集を行い、同年10月ごろの策定を目指す。
委員次の通り。任期は策定完了日まで。
鈴木弘(一般社団法人大船渡市観光物産協会常務理事)齊藤光夫(大船渡商工会議所事務局長)志田繕隆(県旅館ホテル生活衛生同業組合大船渡支部事務局長)鈴木真弓(県飲食業生活衛生同業組合大船渡支部理事)中村純代(㈱キャッセン大船渡エリアマネジメントディレクター)
小川廣文(椿の里・大船渡ガイドの会)及川廣章(さかなグルメのまち大船渡実行委員会委員長)三条義照(岩手開発観光部長)賢木祐(県沿岸広域振興局経営企画部大船渡地域振興センター地域振興課主査)千葉讓(市商工港湾部観光推進室長)