「混合養殖」可能性探る ナマコやウニを〝同時成育〟

▲ 設備内で成育を促すためウニを移植
細長い筒状の養殖設備を海中に設置

 大船渡市漁協(亘理榮好組合長)は、本年度から「ナマコ等の混合養殖実証試験」を管内で実施している。海中に設置した筒状の設備には、駆除の一環で採取したウニを入れて成育を促すほか、来夏にはナマコの種苗を育て、いずれも将来的な出荷を見据える。えさとなる海藻などを取り付けるペースなど課題も多いが、複合的な養殖や漁業資源有効活用などの観点から注目が集まる。

 

大船渡市漁協が実証試験

漁業資源を有効活用へ

 

 漁協では9月下旬、長さ2㍍、直径約60㌢の筒状の養殖設備を30基作成し、10月に管内海域の水深2〜4㍍に設置した。
 筒内は、えさとして海藻をつり下げる構造。先月末には、磯焼け対策による駆除の一環で、ダイバーが漁協管内で採取したウニ約330㌔を、海中に設置した設備に移植した。
 当面は、ウニなどの養殖実証を続ける計画。海藻を入れ替えるペースや、それに伴う成育状況なども見極め、販売できるまでの身入りを目指す。
 ナマコの種苗は、来年6月をめどに移植する計画で、同様に成育を検証。最終的には、アワビの可能性も探る。 
 この事業は、養殖技術の新たな可能性を探るとともに、海洋環境変化への対応や未利用海域の活用実証などが目的。作業自体にあまり手間がかからず、漁業者の収入向上も見据える。
 さらにウニの身入りを高めることで、付加価値向上につなげる狙いも。一方、近年、各地で磯焼けが指摘されている中、通年で必要となる海藻類の確保などが課題とされる。
 実証期間は、令和8年度までの7年間。この間に、ナマコが出荷できる大きさに育つまでの期間なども見定める。
 漁業分野は近年、海洋環境などの変化を受け、資源減少などによって水揚げ量が不安定な状況が続く。貝毒出荷規制の長期化も加わり、厳しい状況に見舞われている。
 また、海洋酸性化傾向の影響を懸念する声も。アワビも近年は不漁が続き、未利用資源の開拓も必要となっている。
 ナマコに関しては冬期に開口日を設けているが、ウニやカキ、ホタテなどと比較し、現状の利活用は限定的。全国的にナマコ資源が注目され、中国市場などでの引き合いが強いほか、大船渡市魚市場でも高値で取引されている。
 市でも、本年度から5年間を期間とする「第2期市まち・ひと・しごと創生総合戦略」で、ナマコの多用途利用やブランド化を図るビジネス創出、ウニ畜養の事業化に道筋をつけるプロジェクトなどを盛り込んでいる。先月26日には、漁協や行政、水産加工業の各関係者で組織する「新規養殖研究会」を設置した。
 市漁協では「新たな養殖を見据えたいが、技術や経験を有しておらず、まずは実証事業で可能性を確かめたい」としている。