「サーモントラウト」安定育成へ 本年度も試験事業展開 盛川漁協(別写真あり)

▲ 今後2㌔程度にまで中間育成する幼魚。盛川漁協の施設内で計画的に管理する

 大船渡市の盛川漁業協同組合(佐藤由也組合長)で5日、ニジマス「サーモントラウト」の中間育成試験事業の一環として、雫石町で育てられた幼魚を赤崎町にある同漁協のサケ・マスふ化場内に移し入れた。漁協の主力事業であるサケ増殖事業は厳しい情勢が続く中、3年前から取り組み始め、本年度は2㌔程度にまで計画的に育て、試験出荷につなげる方針。気仙沿岸では近年、新たな養殖事業への関心が高まっている中、成果が注目される。

 

来夏出荷分の幼魚確保

ふ化施設生かし養殖

 

 この日は、民間事業者が雫石町内で昨年12月のふ化から400㌘程度にまで育てたニジマス約2000匹が届き、もともとは採卵前のサケを畜養するふ化場内の水槽施設に移した。盛川の水で育て、来年夏には調理しやすく脂の乗りも良い約2㌔にまで成育させ、試験的な出荷を行うことにしている。
 昨年夏には74㌘の稚魚から育て始め、今年6月ごろから試験的に出荷。6500匹以上を育てたが、2㌔程度になったのは全体の1割程度にとどまり、安定的な育成面などに課題を残した。
 本年度は、より成育した幼魚を受け入れることで、計画的な管理につなげる方針。秋サケが出回らず、魚の水揚げ量が少ない季節に試験出荷し、差別化や沿岸漁業との〝共存〟も図る。
 同漁協はこれまで、サケ養殖事業とアユの中間育成事業をメーンとしてきた。しかし、サケ養殖は、回帰率の減少などを受け、厳しい状況が続く。漁協では新たな中間育成事業を加えた〝三本柱〟の確立を見据え、平成29年度から試験的に取り組んできた。
 ニジマスの養殖魚は、各地で「トラウトサーモン」や地名を冠した「サーモン」などとして売り出され、新たな漁業資源確保として注目される。生食は、すしねたとして需要がある一方、これまで大半を輸入に頼ってきた。
 県内では、宮古市内で海面養殖が本格化。全国的には海にとどまらず、陸上で養殖する試みも進む。
 気仙沿岸では近年、秋サケの漁獲量が低迷。漁業関係者だけでなく、水産加工業など幅広い分野に影響が及ぶ。さらに海洋環境の変化に対応した動きも求められている。
 海上養殖は、既存漁業との調整などが必要となる半面、盛川漁協での取り組みは、すでにある施設を生かすもので、各種漁業運営との〝共存〟が可能。さらに、えさなどによる海洋環境面への心配もないという。
 今後は安定的な育成手法の確立に加え、すでに各地で養殖事業が本格化している中、産地間競争を意識したブランド化や差別化の動きも求められる。
 佐藤組合長は「3年間の取り組みで、だいぶノウハウもつかめてきた。サケの回帰を待つだけでなく、自主的に取り組む事業も必要。水産加工業者との連携も図りながら、規模を拡大させていきたい」と話している。