陸前高田─名古屋の絆強固に 市民交流団を互いに派遣

▲ 陸前高田で商業者らと交流した名古屋市の産業関係グループメンバー(右側)

 東日本大震災を機に友好都市協定を結んだ陸前高田市と愛知県名古屋市は本年度、市民交流団を相互に派遣し、絆を深めている。今月上旬には陸前高田市から観光まちづくり関係、名古屋市から産業関係の市民団が互いの地を訪問した。震災発生から11日で9年8カ月。復興のその先を見据え、行政間だけでなく、市民レベルの交流から生まれる新たな動きにも期待が集まる。

 

きょう震災9年8カ月

新たな動きにも期待

 

 5、6の両日、両市の産業交流を深めようと陸前高田市を訪問したのは、名古屋市の那古野(なごの)地区の活性化に取り組む㈱ナゴノダナバンク代表取締役の市原正人さん(59)、藤田まやさん(38)、取締役の齋藤正吉さん(57)。
 5日は、市役所で職員から陸前高田市の土地利活用策や産業振興策について説明を受け、市内を視察。その後、中心市街地の出店事業者でつくる「高田まちなか会」の磐井正篤会長ら会員3人と「まちのにぎわいづくり」をテーマに懇談した。
 市原さんや藤田さんは、衰退が課題だった那古野地区の商店街再生を目指し、平成21年から空き店舗と出店希望者のマッチングに力を入れてきた取り組みを紹介。市原さんは「陸前高田は津波ですべて失ったところから、ここまで復興し純粋にすごいと感じた。今回の縁を今後何かの形で生かしていきたい」と意欲を語った。
 高田まちなか会側は、商業施設「アバッセたかた」を核に、官民連携してにぎわい創出を図ってきた震災後の歩みを伝えた。
 磐井会長は「震災後、世界中とのつながりに支えられて今がある」と今回の市民交流団を含め、外部とのつながりに感謝し、「被災した事業者はみんな覚悟を持って新市街地に出店した。商売っ気を前面に出すというより、楽しく仕事をしているなという雰囲気を感じてもらい、ジワジワと人を集められれば」と展望した。
 同会事務局で、ファッションロペ×東京屋カフェオーナーの小笠原修さん(59)は「空き地にどう店を誘致するか、たくさんの気付きがある交流会だった。外部の人のさまざまな意見を聞くと視野が広がり学びになる」と交流の意義を述べた。
 名古屋市は震災後、陸前高田市の行政全般を「丸ごと支援」する独自の取り組みを実施。24年5月に両市教委が絆協定を、26年10月に両市が友好都市協定を締結した。
 名古屋市は本年度までの10年間で職員延べ250人を派遣。中学生の相互交流も盛んに行っている。
 本年度は、名古屋市から▽文化芸術▽産業▽防災▽スポーツ──の4分野の市民交流団を10月から順次派遣。陸前高田市からは今月4〜6日、観光分野の市民ら9人が名古屋市を訪れ、交流プログラムを通じて観光客誘致や魅力発信の取り組みなどを学んだ。
 陸前高田市観光交流課の村上知幸課長は「両市の市民同士による交流から何か新たなアクションが起きることを期待している。そうした動きを行政としてバックアップしていきたい」と話した。