陸上展示へ補修作業進む 木造復元船「気仙丸」(別写真あり)
令和2年11月22日付 1面
平成3年に建造され、陸上展示が計画されている木造千石船の復元船「気仙丸」の長寿命化事業が、大船渡市赤崎町の㈲大船渡ドック(中野利弘代表取締役)で続いている。液体ガラス塗装を施すためこれまでの塗装をはがすとともに、気仙船匠会(新沼留之進会長)のメンバーらが傷みが進んだ部分を新調するなど、地道な作業を重ねる。年内には補修作業にめどがつく見込みで、今後は移設場所など大船渡駅周辺地区内での展示のあり方に関する調整も本格化する。
船匠会の技術と経験随所に
移設場所調整も本格化へ
気仙丸は8月19日に、長年係留されていた蛸ノ浦漁港から陸揚げされた。安定させるおもりとして積んでいた「バラスト」の取り出し後、水洗いを行い、老朽化の進行具合などを確認した。
その後、2カ月以上にわたり、関係者による船体全体の塗装をはがす作業が続く。船体には精巧な彫刻もあり、作業員らが細心の注意を払う。
船体の左右にあり、垣根のように施された「垣立」は、腐食が進んでいたため新調。なめらかな曲線の再現には、船匠会メンバーの熟練の技が生かされる。
このほか、船中央部の梁の一部も取り換える。陸上展示を見据えて、雨水が抜けやすいように施すなど、木造船の技術や文化を後世に残すための工夫も重ねる。
1000個以上に及ぶ銅板を再び取り付ける作業をはじめ、今後も細かい工程が続く。中野代表取締役(73)は「補修や塗装だけでなく、展示場所に持って行くためにつり上げる作業もある。一つ一つ課題をクリアしていきたい」と話す。
船匠会からは、連日メンバー数人が補修現場に通う。副会長の菅野孝男さん(77)=陸前高田市気仙町=は垣立の間に設ける「菱井桁」の新調に向け、模様の彫刻なども担う。「いかにして、造った当時に近い状態にしていくか。われわれ大工も70代後半で大変だが、心を一つにしてがんばりたい」と力を込める。
今月18日には、船匠会メンバーと大船渡ドック、大船渡商工会議所、市の関係者による打ち合わせ会を開催。補修作業の流れを共有したほか、展示計画地の現地調査も行う方針を確認した。
気仙丸は、江戸時代に気仙と江戸、九州地方の交易に活躍したとされる「千石船」の歴史を伝える復元船。長さは18㍍、幅5・75㍍、高さ5㍍。帆柱の高さは17㍍で、帆の広さは畳85枚分に及ぶ。
商議所を中心に組織された千石船建造推進協議会が資金を募り、船匠会メンバーの技術を結集し、平成3年12月に完成。翌4年には「三陸・海の博覧会」に協賛出品され、高い評価を受けた。
以降、さまざまなイベントや映像撮影に活用され、東日本大震災時は係留されていた蛸ノ浦漁港で奇跡的に被害を免れた。一方、近年は腐食の進行が課題となっていた。
海上活用は断念し、陸上展示に向けた長寿命化策として施す液体ガラス塗装は、20年超の耐久性や防炎、防腐・防蟻(ぼうぎ)、変色防止の効果がある。神社仏閣の補修や再生事業などで採用されている。
事業財源は市が確保し、商議所に補助。市議会6月定例会で、事業費7000万円を盛り込んだ補正予算案が可決された。年度内の完了を目指している。
展示場所は、船を活用した地元内外の人々による交流の場を目指す「みなとオアシスおおふなと」内の大船渡駅周辺地区で検討中。気仙の船大工による卓越した伝統技術を後世に伝える事業などに生かし、観光誘客につながる取り組みも見据える。






