利用・予約実績は9000泊超 市独自の宿泊観光回復事業

▲ 「大船渡に泊まってHappy!大作戦」のクーポン券

 大船渡市による独自宿泊観光回復事業「大船渡に泊まってHappy!大作戦」の利用・予約実績が、9000泊分を超えたことが分かった。県民を対象に最大5000円分を補助するもので、市内10の宿泊施設が利用でき、クーポン券は380店舗以上で対応。利用の大半は新型コロナウイルスの県内感染が拡大していない9、10月に集中し、落ち込んだ観光業の回復を後押しした。今後は利用者の〝リピーター化〟に向けた動きが注目される。

 

9〜10月の来訪が大半

下落歯止めに一定効果

 

 この補助事業は、新型コロナウイルスの経済対策の一環。市民を除く県民利用は1人1泊当たりの宿泊料金のうち、最大4000円分を補助するほか、1000円分のクーポン券を配布。市民が利用する場合は、宿泊料金分として最大5000円分を助成する。
 宿泊予約は、今年8月24日に開始。事業を受託する市観光物産協会によると、11月10日時点の利用・予約状況は県民向けが7648件で、想定件数の89・5%に。市民向けは1435件で、同じく91・4%に達した。県民、市民の合計は9083件となっている。
 実際に宿泊が始まった9月1日時点での予約は1600件だったが、10月中旬には利用と予約合計が7800件を突破。国による「Go Toキャンペーン」や、県の「地元の宿応援割」をはじめ各宿泊制度との併用も認め、9月と10月の利用で7割を超えた。
 施設によってばらつきはあるものの、個人客や数人での旅行が中心。9月の休日に合わせた利用が目立った。
 当初は関東方面で計画していた修学旅行の見直しを受け、小中学生の団体利用も。市民も宴会時に合わせての利用で「初めて市内に泊まった」などの声が寄せられ、好評を博してきた。
 クーポン券を利用できる加盟店は、市内全世帯に1万円分を配る「ふるさと振興券」事業と連動。事業委託を受けた大船渡商工会議所が飲食店や小売店、サービス業などの小規模店舗に限定し、加盟店は380店舗を超えた。
 宿泊利用は来年2月27日(土)、クーポン券利用は同28日(日)が期限。現在、予約は「海鮮の宿ごいし荘別邸海さんぽ」(末崎町)と「旅館菊水館」(大船渡町)、「民宿刈谷ハイツC」(盛町)で対応している。
 また、市内の宿泊や観光、製造、物販などの各事業所関係者らで構成する「地域ブランディング研究会」は9月から、宿泊者に対し、市内の飲食店で利用できる3000円分の「共通夕食券」や「お土産付きプラン」の各サービスを展開。こうしたサービス利用者は2000人を超え、地元消費循環に一定の成果を上げた。
 市内の宿泊者数はここ数年、年間20万人前後で推移。新型ウイルスの影響で今年3月以降、宿泊施設で予約のキャンセルが相次いだ。とくに5月の宿泊者は5827人で、前年同期比の29・9%にまで落ち込んだ。6〜8月は例年2万人前後で推移し、年間でも最も多い利用時期となるが、6割未満にとどまった。
 これを受け、1万泊分程度の底上げにつなげようと、市が5200万円の財源を確保した。9月の宿泊者は今年に入り最も多い1万2947人で、前年同期比の74・2%に。宿泊事業による一定の成果がうかがえる。
 一方、県内で感染者が急激に拡大した今月中旬以降は、市内の宿泊施設でもキャンセルの動きが見られるという。この事業を生かして宿泊した利用者らが、今冬以降に再び足を運ぶ流れをつくり出せるかがカギとなる。
 同協会では「宿泊し、施設や市の魅力を知った方もいらっしゃると思われる。事業の成果を今後に生かしたい」としている。
 宿泊費助成の問い合わせは市観光物産協会(℡21・1922)、クーポン券に関しては商議所(℡26・2141)へ。