食の地産地消を後押し 広田町のS ETが新サービス「ぴいろた組合」 展開 地元の食材を町民に配達

▲ 産直で食材を購入する宍戸さん㊧と下平さん(右奥)

 

購入した食材はサービス登録者のもとへ配達

陸前高田市広田町に拠点を置くNPO法人SET(三井俊介理事長)は、同町内の生産者から食材を買い取り、購入を希望する地元住民に届けるサービス「ぴいろた組合」を展開している。生産者と消費者のニーズをマッチングさせ、町民の豊かな暮らしに資する新たな取り組みとして注目を集めている。
 ぴいろた組合は、食の地産地消を促進し、同町の経済活性化や持続可能なまちづくりにつなげようと今年9月にスタート。同法人メンバーの下平咲貴さん(24)と宍戸那央樹さん(22)の2人が運営を担当している。
 サービスでは、担当の2人が町内の生産者から新鮮な野菜や魚を買い取り、同組合に登録している食材購入希望者の家に配達。登録者に対しては月ごとに集金を行い、毎週または隔週に1度のペースで、集金額に応じた食材を届ける。
 食材の購入元は、SETの取り組みに賛同する地元の産直関係者や漁業者ら。「野菜が余っている」「魚がたくさん取れたので買ってもらいたい」という生産者らと、「地元産の食材を食べたい」「家で食材を受け取りたい」という購入者のマッチングを図る。
 同町の広田園芸生産組合(志田忠一組合長)が泊地区で週2回、早朝に開く産直市場も食材購入場所の一つ。近年、来客数が減少していたという同市場では、ぴいろた組合による食材購入からまとまった収入が得られているほか、担当者を通じて消費者の声を知る機会にもつながっている。
 広田園芸生産組合員の村上ノブ子さん(84)は「とても助かっている。地域で作られた野菜の味が認めてもらえているという声が聞けることもうれしい。ぜひこれからも取り組みを続けてもらいたい」と歓迎する。
 平成24年に東京から広田に移住した三井美帆さん(31)は、ぴいろた組合を通じて食材を購入するようになってから「生活が変わった」という。「旬のおいしい食材がおまかせのパックで届くのがうれしい。生きている魚を自分でさばいたり、SNSで料理を公開する機会も増えた。ぜひこれからも利用したい」と今後に期待をかける。
 「ぴいろた」はアイヌ語で「広田」を表した言葉といい、地域住民にも広く知られていることからサービス名に採用した。
 26日現在のサービス登録者は約30人。SET関係者で東日本大震災後に同町へ移住した人たちの利用が多いが、今後は移住者以外の地元住民の利用増も目指し、サービスを周知していく。
 宍戸さんは「将来的に、陸前高田市全体で同様の取り組みが広がってほしいという思いもある。登録者が増えていくことを想定し、受け入れ側の体制も整えていければ」と構想を膨らませる。
 下平さんは「ぴいろた組合は、町民同士のつながりを生かし、豊かな暮らしにつなげようと練ってきた一つの提案。生産者と消費者の双方が喜び合えるようなサービスをこれからも模索していきたい」と先を見据える。