地域の方言を形に 「気仙弁カルタ」を制作 吉田さんが半年余りかけて

▲ 「気仙弁カルタ」の完成を喜ぶ吉田さん

 大船渡市大船渡町の吉田國子さん(87)はこのほど、「気仙弁カルタ」を制作した。「地域に伝わる方言を形にしたい」と思い立ち、家族や知人らの協力を得て完成させたもの。世代を超えて気仙弁に親しみ、楽しめるものに仕上がっており、吉田さんが所属する市民団体やNPO法人では、かるたの普及に向けた取り組みも進行中。吉田さんは「かるたが形になってうれしい」と話し、次回作にも意欲を見せている。

 

世代超え楽しめるものに

 

 吉田さんが気仙弁のかるた制作を思い立ったのは、今年2月ごろ。新型コロナウイルスの影響が国内にも及びはじめ、感染予防のために外出を控えるようになってきた中、「何か面白いことはないかと考えたとき、気仙弁を形にしよう思った」と振り返る。
 参考にしたのは、『気仙方言辞典』(金野菊三郎著)。吉田さんは普段からこの辞典に目を通しており、専用のノートを作ると、気仙の方言を盛り込んだ文章を思いつくまま書きとめていった。
 「てんじょすねばねァがら おさぎしァんす(台所仕事をしなければならないので、お先に失礼します)」「にんぎゃかったりしょっぱがったり 下手な賄(まが)ねァ(苦かったりしょっぱかったり、下手な料理)」「わりごどすっと スネカくっつォ(悪いことをすると、スネカが来るぞ)」など、吉田さんの経験や日ごろの思いなどをまとめた文章もあるという。
 監修は赤崎町の金野孝子さんが務め、方言の使い方や言い回しを確認したり、吉田さんとともに文章を考案。半年ほどをかけて「あ」から「ん」までの五十音に沿った50枚分の読み札をそろえた。奥州市に住む吉田さんの弟・鈴木祐さんが文字入力や印刷を担い、手作りで仕上げた。
 札は、はがき大(縦6㌢、横4㌢)の大きさ。二つのグループが同時に遊べるようにと、読み札1セットと取り札2セットで1組とし、10組を作った。
 このうち1組は、吉田さんが所属するボランティアグループ「せきれい」(金野聰子会長)に贈呈。残りは市内の福祉施設、市立図書館に届ける予定という。
 せきれいでは活動日となった4日、盛町の総合福祉センター内にある「声の福祉図書館」でかるたの読み札を朗読し、CDに録音。かるた本体や同日収録した朗読劇などのCDとともに、同市猪川町の養護(盲)老人ホーム「祥風苑」に寄贈する。
 また、吉田さんが会員を務めるNPO法人・おはなしころりん(江刺由紀子理事長)では、子どもたちにもかるたを楽しんでもらえるよう取り札に絵を加えており、製品化を目指した取り組みを進めていくという。
 かるたの完成に、吉田さんは「各地の地方弁かるたを見て、負けてはいられないと作った。弟にはたいした苦労をかけたが、こうして出来上がってうれしい。次は、内容を衣食住に分けたかるたを作ってみたい」と話していた。
 声の福祉図書館で所蔵するかるたは、希望者に貸し出す。問い合わせは同図書館(毎週水曜日午後1時~3時開館、℡26・3500)へ。