只出海岸の防潮堤完成 陸こう2基は17日から自動閉鎖運用(動画、別写真あり)
令和2年12月9日付 7面

東日本大震災で被災し、陸前高田市が新たに整備した小友町、広田町にまたがる只出漁港海岸の防潮堤が完成し、17日から陸こう2基に設けた自動閉鎖システムの運用が始まる。全国瞬時警報システム(Jアラート)と連動し、人の手に頼らずに開閉する陸こうは市管理分で10基あり、今回を含め計8基が完成。残る脇之沢漁港海岸の2基は来年3月の運用開始を見込み、年度内に市が管理する陸こうの自動閉鎖システムが整うこととなる。
運用開始に先立ち、7日、現地で漁業者ら向けの説明会が2回開かれ、1回目には約20人が参加。大津波警報が発令されたとの想定で自動閉鎖の試運転が行われ、備え付けのスピーカーからサイレンが流れ、参加者はゲートの全閉の様子を見学した。
ワカメ養殖などを営む地元の男性(65)は「立派な保全施設が完成した。ただ大きな津波が発生する場合は避難が重要で、浜から安全に逃げられるよう注意したい」と話した。
同市は6日、地元消防団向けにも現地説明会を実施した。
新たな防潮堤は、総延長922㍍。高さは地元との協議を踏まえ、旧施設より4・5㍍高いT・P(東京湾平均海面)10・9㍍とし、数十年から百数十年に1度程度の頻度で発生する津波から後背地を守る。防潮堤両端には、防潮堤を乗り越えて海側と陸側を行き来できる乗り越し道路も整備した。
車などの通行口となる陸こうは4カ所あり、自動閉鎖システムを導入している2基と常時全閉の2基。自動閉鎖の陸こうはそれぞれ幅4㍍、高さ4・7㍍で、水門はフラップゲート式の1基を整備した。
同システムは、Jアラートで津波注意報・警報、大津波警報を受信すると、県庁と沿岸広域振興局に設置している「統制局」から自動閉鎖指令を出す仕組み。自動で閉鎖できなかった場合には、大船渡地区合同庁舎や各自治体、消防署などに設置した「制御所」からも遠隔操作で制御・監視できる。
市管理の陸こうのうち、同システムを導入するのは、要谷漁港3基、只出、脇之沢漁港海岸の各2基、大陽、両替、根岬漁港海岸の各1基。
市水産課の菅野泰浩課長は「(比較的発生頻度の高い)L1津波から守る防潮堤が完成したが、想定を超えた災害の発生に注意しなければいけない。保全施設が整っても避難を基本とする行動をとるよう周知していく」と気を引き締める。