吉浜太陽光発電所計画 「住民理解」巡り論戦 新たな同意書求めない意向 事業推進に向け当局答弁 市議会一般質問に5議員が登壇
令和2年12月12日付 1面

大船渡市議会12月定例会は11日、通告に基づく一般質問が行われ、いずれも光政会の渡辺徹、小松龍一、菅原実、佐藤優子、伊藤力也の5議員が登壇した。複数の議員が吉浜地区の太陽光発電事業計画を取り上げ、当局と論戦。当局は、事業者が大窪山でのパネル設置などに向けて計画変更手続きを進めている現状に触れ、変更に伴う新たな地域からの同意書は求めず、これまでの説明機会を通じて住民理解が広がっているとの考えを示した。
太陽光発電事業を取り上げたのは、渡辺議員と菅原議員。民間事業者が吉浜地区内で計画し、当初は荒金山と大窪山(市有地を含む)での整備に向けて官公庁への手続きを進める中、事業者側に地域同意を求めてきた経緯がある。今年に入り、事業者は太陽光パネルを大窪山のみに設置する変更計画をまとめ、住民説明会が行われた。
渡辺議員は「吉浜地区住民の請願に基づく審査で、公文書の遡及(そきゅう)が表面化した。先月の(市議会の)月例会議での説明では、新たに変更契約を締結することになるが、同意書は求めないとのことだった。事務手続きに瑕疵(かし)があり、住民を無視するような動きはどうなのか」と疑問を投げかけた。
武田英和企画政策部長は「昨年から反対運動が表面化し、ある一定数の反対を求める動きがある中で、同意書を求めるのは現実的ではない」と答弁。同議員は「住民理解はどうなるのか。整合性がない。遡及への見解もない」と反論した。
江刺雄輝総務課長は「事務手続きについては、内部で詳細を調査しており、その結果に基づき対応したい」と回答。戸田公明市長は「疑問点や反対の論点に対し、これまで丁寧に説明を重ねている。多くの皆さんがすでに理解し、反対している方は絞られてきているととらえる」と語った。
菅原議員は「吉浜の皆さんの反対を押し切って進めることになる」と指摘。同地区における協働まちづくりの行方を挙げながら「事業を再考すべきでは」とも発言した。
戸田市長は「官庁への申請はこれからで、どうなるかは分からないが、事業者が真摯(しんし)に対応する限りは支援したい。事業に反対している方々は限定され、協働まちづくりは予定通り全ての地区でできるものと考える」と答えた。
副市長2人制を取り上げたのは、小松議員。東日本大震災発生翌年の平成24年から3年間は2人体制をとっていたが、近年は1人に戻り、今年4月からは市職員出身の志田努氏を起用している。国などからの招へいによるパイプづくりや新たな視点での効率化などを挙げ、2人制を提言した。
答弁で戸田市長は、復旧・復興に向けた業務量増大などへの対応で2人制を導入した経緯を振り返り、当面は1人体制を続ける方針を掲げた。「地方創生が求められる中、地域課題を知る方とともに前に進んでいきたい」と理解を求めた。
佐藤議員は、デジタル化推進体制と市民サービスの向上を巡り論戦。SNSを生かしたさらなる情報発信にも触れ「『LINE(ライン)』は全世代で利用し、県も新型コロナウイルス対策でも活用している。市の活用の考えは」と迫った。
武田企画政策部長は「職員の入力作業や掲載情報の種類など、検討事項がある。有効な媒体としては認識しており、他自治体の動きも参考にしながら引き続き検討したい」と述べた。
伊藤議員は、新型ウイルス感染拡大に伴う対応を取り上げた。県内でもクラスター発生が相次いだ状況を受け、「濃厚接触者への対応が重要」と指摘し、事前想定の動きをただした。
戸田市長は「公共施設の一時休館も含めた制限、イベント自粛、小中学校の臨時休業など、可能な限り人との接触を減らす対応を検討する。市業務継続計画では、優先的に対応する業務をあらかじめ設定し、感染確認時には速やかな消毒実施や窓口業務の体制確保など、行政サービス維持に万全を期したい」と答えた。
佐々木義久災害復興局長(新型コロナウイルス感染症対策室長)は、県が4段階で定めた感染状況のうち、感染まん延期の「フェーズ3」に備えて入院350床と、無症状対応の宿泊療養施設300室程度の確保を掲げ、すでに374床、381室分を確保した状況を説明。再質問への答弁で金野久志復興政策課長(同対策室次長)は「宿泊療養施設の場所は公表されていないが、保健所で搬送も含め手配していると聞いている」と述べた。