検証/三木・ランバー破産問題㊥

▲ 11月、町内5地区で住民説明会が開かれた

多額の債権の行方は
連帯保証人は〝抗戦〟の構え

 

 住田町にとって、平成26年度以降課題となっていた三木、ランバーからの融資金の回収。両事業体では多くの雇用や地域への経済効果も生み出しており、事業と雇用を継続できる形での債権整理に向け、29年7月、大船渡簡易裁判所に調停を申し立てた。話し合いを6回にわたり行ったが、事業者、連帯保証人との和解合意には至らず、30年8月、裁判官の判断により調停は打ち切りとなった。
 両事業体の破産申請後、ランバーはけせんプレカット事業協同組合の製材工場、三木は集成材工場として稼働しており、両事業体から受け入れた43人の従業員は再びそれぞれの工場で働いている。

 ひとまず、事業の継続、雇用の確保が図られたが、総額13億円を超える町の債権の行方はどうなるのか。
 町は債権を回収するため、10月21日の町議会臨時会に連帯保証人とその相続人計19人に対して訴訟を提起する議案を提出し、全会一致で可決された。
 一方、11月24日に盛岡地裁一関支部で開かれた第1回の債権者集会では、両事業体に対する債権総額が約16億円におよぶが、両事業体の資産額は現段階で合わせて約8800万円とされ、債権整理による配当では町が有する債権の全額回収は厳しいことが分かった。
 複数の連帯保証人は東海新報社の取材に対し、「われわれには何らメリットはないが、迷惑はかけないからと言われ、住田町を助けたい一心で(連帯保証の)判を押した」「(債務負担に関する)『農林業振興資金借用証明書特約条項』というものを、調停時に初めて見せられた。そんなものがあると分かっていれば、連帯保証人になどならなかった」などと主張。
 かつて三木の理事を務め、連帯保証人にもなっている一人は「融資を受けた当時の理事は、退陣するよう言われた。ほかに引き受ける方がいないのでそのまま残ったが経営権はなく、融資の支払い状況も理事会には一切報告はなかった。それなのに最後の最後に責任だけ押しつけるのか」と憤る。
 連帯保証人らには今月9日、裁判所から訴状が届いた。同14日には連帯保証人やその関係者ら約10人が集まり、今後の対応を協議。「はんこを押すときには金額が書かれておらず、ただ名前を貸してくれとだけ頼まれた」「言うなれば、われわれは連帯保証人ではなく、〝借用証書署名人〟だ」などとそれぞれが主張を述べたうえで、保管する書面のコピーを共有するなどして、「徹底抗戦」していくことで意思統一を図った。今後は、裁判に向けて主張をまとめるなど、答弁書の作成も行っていくという。

 提訴後、町は5地区で住民説明会を開催し、平成29年の調停申し立てから破産手続き開始決定、両事業体の連帯保証人とその相続人に対する提訴に至るまでの経過を説明。
 この中で、融資について町側は「経営状況が苦しいから融資となった。町の産業・林業振興、川上から川下までの森づくり、雇用の確保など、当時の当局と議会で長く協議し、どうしても継続させなければいけないという判断で融資に至ったものと考えている」とした。提訴の是非についての意見に対しては、「地方自治法上、避けられなかった。最高裁の判例にあるが、これに関して町長に自由裁量権はない」と説明した。
 各地区の住民からは、貸し手側である町の責任を問う意見や「なぜこの融資に至ったのか。それが町民の一番聞きたいこと」「融資後に職員を出向させて管理するということで安心していたが、その時、経営が厳しいということで対応できていれば、こんな状況にならなかったのではないか。報告を受けて協議をしなかったのか」といった質問も上がった。
 これについて当局側では「過去の部分については、裁判の中で明らかになってくると考えられる」との答弁を繰り返したが、「一体何のための住民説明会なのか」と、説明会のあり方に疑問を呈する住民もいた。
 説明会での住民の反応から、経営危機に至った経緯や多額の公的融資の妥当性、債権の全額回収が困難となった場合の経営陣、町当局の結果責任などについて、町側の説明が十分だったとは言いがたい。今後、裁判で明らかになった事実、住民が投げかけた疑問点について、町は説明を尽くし、町民に対する責任を果たしていかなければならない。